特養での看取りとは?看取りの現状やケア内容、費用、施設の選び方

記事公開日 2023/08/30

記事公開日 2023/08/30

特養での看取り

特養は原則として終身利用できる施設です。そうなると、看取り期・終末期の対応が気になる方も多いかもしれません。
この記事では、特養で看取りはできるのか、病院での看取りとの違い、看取り介護で行われるケアの内容などを解説します。

特養で看取りはできる?

特養では多くの施設で看取りが可能です。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめた報告書によると、87.9%の特養が看取りの希望を受け入れており、原則として受け入れていない特養はわずか9.2 %です。

そもそも看取りとは、無理な延命治療を行わず、自然な最期を迎えられるまでの過程を見守ることです。本人や家族の意向に沿って、最期まで尊厳を保てるようにサポートします。

たとえば、死を避けられない方に対し、栄養を胃に流し込むなど生命を無理やり維持するための延命治療は行いません。反対に、身体的苦痛や精神的苦痛の緩和を目的としたケアが重要視されています。

看取りのニーズ

特養などの介護施設での看取りは、社会的な背景からみても重要です。
近年、日本では高齢化にともない死亡人口が増加しています。厚生労働省によると、死亡者数は年々増加しており、1989年に約79万人だった年間死亡者数は、2040年には2倍以上の約168万人にのぼると予測されています。

多くの人が亡くなる「多死社会」を迎え、これまでの医療・介護体制では十分な対応ができません。現在約8割の人が病院で亡くなっていますが、今後、病床数が不足し、病院以外の場所で最期を迎える人が増加することになります。

一人暮らしの高齢者も増加していることから、自宅で家族の介護を受けながら最期を迎えられる方も多くはありません。
そのため、特養などの介護施設における看取りのニーズは、今後ますます高まることが予測されます。このような社会的な背景からも、看取り介護は重要視されています。

特養と病院における看取りの違い

特養と病院における看取りの違い

特養と病院の大きな違いは、医師が常駐しているかどうかです。
医師の有無により、看取り期間の医療措置や死亡確認の対応に違いがあります。

医療措置はすぐにできない

特養ではすぐには医療措置ができません。医師が常駐していないため、介護士や看護師による24時間の巡回やバイタルチェック、痛みを和らげるマッサージなどを行い対応します。
苦痛をできる限り緩和し、尊厳を保ちながら自然なかたちで最期を迎えられるように支援します。

病院では医師が常駐するため、痛みの緩和を目的とした処置や、点滴などの医療措置を含めた「ターミナルケア」が行われます。

死亡確認はすぐに行われない

特養には医師が常駐していないため、すぐには死亡確認がされません。
医師の状況によってはすぐに駆けつけられないこともあるため、夜間帯に呼吸が停止した場合は朝に死亡確認を行うケースもあります。また、ある施設では家族の希望により死亡確認を夜間ではなく朝にしているそうです。

対応は施設によってさまざまですが、特養では医師の勤務状況や家族の意向を汲み取り、柔軟に対応しています。
一方、病院には医師が常駐しているため、呼吸が停止した際はすぐに死亡確認が行われます。

特養の看取り介護で行われるケア

特養での看取りケア

特養の看取り介護で行われるケアは下記の通りです。

・精神的なケア
・身体へのケア
・家族へのケア

入居者の精神的なケア

看取り介護が必要な時期になると、死に対する恐怖や病気の痛みなどによる不安から、精神的に不安定になる人も少なくありません。悩みや葛藤を1人で抱え込み、孤独を感じる可能性があるため、看取り介護において精神的なケアは非常に重要です。

看護師や介護士など多職種で協力し、できるだけ側に付き添い、傾聴や声かけ、スキンシップを図るなどの精神的なケアを行います。
職員は悩みや思いを傾聴し、安心して最期を迎えられるようにサポートします。顔なじみの施設職員による関わりは、苦痛や不安、孤独感の緩和につながるのです。

具体的には下記のようなケアが行われます。

・身体の痛む箇所をさする
・コミュニケーションをとる
・入居者が安心して過ごせる環境を作る

精神面のケアでは、日々のコミュニケーションが特に大切です。看取り介護では、「その人らしい最期」を迎えられるような援助が大切にされているためです。

「その人らしさ」を知るためには、入居者とのコミュニケーションからこれまでの暮らし方や生活習慣、こだわりなどを把握することが重要になります。
特養に入居する前の生活スタイルや会話内容を家族から聞き、ケアの参考にするなどの工夫をする施設もあります。

入居者の身体へのケア

特養の入居対象になる方は、原則要介護3以上の要介護認定を受けた方です。
入居を開始した時点で、日常生活におけるケアの必要性が高い方が多いという特徴があります。

看取り介護が必要な時期になると、入居者の介護度はさらに上がります。
特養で亡くなった方の要介護度は、要介護5が51.4%・要介護4が34.7%(入居時は要介護5 30.1%、要介護4 39.3%)と、自分で身の回りのことを行うのは困難な方が多い傾向です。

看護師や介護士は、入居者の尊厳を守るために、入居者の気持ちや意思を尊重しながら身体的なケアをしています。
具体的には下記のようなケアを行います。

・バイタルチェック
・水分や栄養の補給
・入浴・排泄などの介助
・床ずれ予防の体位変換
・口腔内の衛生環境の維持
・室温や照明などの生活環境の整備

食事や排泄、入浴、生活環境の整備などの日常生活における基本的なケアは、最期まで人としての尊厳を保ちながら生活を送るためにも非常に重要です。また、肺炎や脱水、感染症、床ずれなどの予防にもつながります。

看取り介護では、身体的苦痛の要因となるこれらのリスクを予防し、最期まで穏やかに過ごせるようなケアをすることが大切です。入居者ができるだけ快適に過ごせることを目的として、施設では十分な配慮をしています。

入居者の家族へのケア

看取り介護では、入居者本人だけでなく家族への精神的なケアも重要です。入居者の死が近づくにつれ、家族もまた大きな不安やストレスを抱えやすくなります。職員はねぎらいの言葉をかけたりして、家族の気持ちに寄り添います。

看取りを支える家族が安心して過ごせるよう、特養では下記のようなケアを行います。

・家族の気持ちに寄り添う
・家族が相談しやすい環境作り
・入居者が亡くなったあとの心のケア

職員は普段から家族が相談しやすいように声かけをして、不安の軽減に努めます。
入居者の部屋にノートを置き、家族と職員が意思疎通を図るためのツールとして活用する施設もあります。

また、入居者の現在の状態や今後予測される病状、最期を迎えるときの兆候などについて事前に説明を受けることも心の準備として必要でしょう。

死期が近づくと食事量が減ったり、眠っている時間が長くなったり、手足が冷たくなるなどのさまざまな兆候が現れます。自然な経過であることを事前に知っておけば不安が和らぎます。

両親や夫・妻などの大切な家族が亡くなれば、残された家族は悲しみやつらさがこみ上げてくるものです。そんな気持ちに寄り添い、多くの職員は家族の気持ちに寄り添ったケアを心掛けています。

看取りができる特養の選び方

看取りができる特養の選び方

看取り介護の体制や環境は施設によって異なります。特養での看取りを希望する場合は、入居前に下記のポイントを確認しておきましょう。

・看護師の配置が厚い
・医療機関と連携している
・施設内で職員の連携が取れている
・入居者と家族が落ち着いて過ごせる環境がある
・看取りの実績が豊富にある

看護師の配置が厚い

特養には看護職員の配置義務がありますが、看護師の配置が厚いと安心感があります。

一人ひとりの状態に合わせて看取り介護をするためには、医師や看護師、介護職員など多職種での連携が重要です。看護師はそのなかでも中心的な役割を担っており、身体的、精神的な苦痛を取り除き、穏やかに終末期を迎えるためのサポートをします。

看護師が24時間体制で常駐していればより安心できますが、夜間や深夜帯に常勤・当直の看護師がいる割合は2.5%と低い傾向です。特養の夜間の看護体制は、オンコールで対応して駆けつけ対応もする施設が大半となっています。

施設によって体制が異なるため、夜間帯や緊急時の看護体制について、事前に施設に確認しておくと安心です。

医療機関と連携している

特養での医師の配置基準は必要数とされ、実際には常勤が0.6%、非常勤が93.6 %と、ほとんどが非常勤です。また、緊急時に配置医師が対応できないときに、代わりに訪問できる医師がいる特養は50.4%しかありません。

そのため、看取りの際には病院との連携が欠かせず、特養には“あらかじめ協力病院を定めておく”という運営基準があります。実際に、特養では平均で1.8カ所の医療機関と協力関係にあるというデータもあります。

緊急時に医療機関や配置医師がすぐに対応してくれるのか、体制や対応などを事前に確認しておくと安心でしょう。

施設内で職員の連携が取れている

看取り介護は施設全体で協力して行います。入居者の状態やケアの方法、注意点などの情報が共有されていると職員の対応が統一され、一人ひとりに合ったケアを受けられます。

入居前には施設見学の際に質問するなどして、看取りの対応についてはもちろん、看取りの体制や情報共有の仕方を確認しておきたいところです。

入居者と家族が落ち着いて過ごせる環境がある

入居者の容態が悪化したときや最期が近づいたときは、家族が付き添って過ごすことが多くなります。そのため、家族が入居者と共に安心して過ごせる環境があると良いでしょう。

ユニット型個室従来型個室であれば一人部屋ですし、多床室であっても静養室などが利用できれば人目を気にする必要もありません。家族が宿泊できる部屋を設置している施設もあります。

また、亡くなったあとのエンゼルケアを落ち着いた環境でできる施設であれば、ゆっくりと故人を見送れます。

看取りの実績が豊富にある

特養での看取りを希望するなら、実績のある施設だと安心です。何度も看取りをしている施設には、看取り介護の知識や技術のある介護職員や看護職員がいます。

死期が近づくとさまざまな兆候が現れます。職員は意識や呼吸、血圧の変化などを注意深く観察し、入居者の状態を的確に把握して対応しなければいけません。
看取り介護の実績が豊富な特養なら、安心してケアを任せられます。施設に過去1年間の看取り回数や、看取りの流れを確認しておくと良いでしょう。

老人ホーム相談室LP

看取り介護でかかる費用は?

看取り介護でかかる費用

特養で看取りをする場合には、看取り介護加算が発生します。
看取り介護加算は、医師から回復の見込みがないと診断された入居者に対し、多職種が連携して看取りケアを行ったときに加算される介護報酬です。

看取り介護加算には「看取り介護加算(Ⅰ)」と「看取り介護加算(Ⅱ)」があります。

看取り介護加算(Ⅰ)

身体的あるいは精神的な苦痛を緩和するためのケアに対して加算される介護報酬です。
算定するには下記の算定要件を満たす必要があります。

・常勤看護師を1名以上配置し、施設または病院等の看護職員との連携による24時間の連絡体制を確保している 
・入居の際に、施設は本人と家族に看取りの指針について説明をしたうえで同意を得ている
・指針は多職種による協議のもとで見直しを行っている
・看取りに関する職員研修を行っている
・看取りの際には、個室や静養室の利用ができるように配慮している
・厚生労働大臣が定める基準に適合する入居者に対して看取り介護を行なっている

看取り介護加算(Ⅰ)では、下記の費用が発生します。

看取り介護加算Ⅰ/特養
※自己負担額は1単位10円として計算

看取り介護加算(Ⅱ)

入居者の医療ニーズに対応した看取りに対して加算されます。
看取り介護加算(Ⅰ)の要件をすべて満たし、下記の要件に当てはまる場合に加算されます。

・入居者に関する注意事項や病状の情報共有、連絡方法などについて、施設と配置医師の間で具体的な取決めがされている
・複数名の医師を配置、または協力医療機関の医師と連携して、24時間対応の体制を確保している

看取り介護加算(Ⅱ)では、下記の費用が発生します。

看取り介護加算Ⅱ/特養
※自己負担額は1単位10円として計算

看取りを希望するなら、ご本人・ご家族が納得できる特養を

特養では、入居者と家族が最期まで安心して過ごせるように、身体的苦痛や精神的苦痛の緩和を目的とした看取りケアを実施しています。
病院との大きな違いは、医師が常駐していないことです。そのため、特養ではすぐには医療措置ができません。

施設での看取りを希望しているのであれば、看取りケアの方針や看護・医療体制や職員の連携方法、施設の環境などを入居前に確認しておくと安心です。

ご本人・ご家族が納得した看取りとなるよう、希望に合った施設を探してみてください。

著者:オアシス介護

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