そのための切り札ともいえるのが、「地域包括ケアシステム」の構築です。全国各地で意欲的な取り組みが行われていますが、板橋区ではその取り組みを「板橋区版AIP」と名付けました。AIPとは、「年を重ねても安心して住み慣れた地域に住み続けること」を意味する、Aging In Placeの頭文字をとったものです。 板橋区版AIPには、いくつかの重点分野があります。その中で最初に挙げられているのが「介護予防・日常生活支援総合事業の充実」です。高齢になっても、心身の状態が良好であれば、支える側に回って活躍することができます。そのことは、高齢者にとっても誇りになりますし、そこから生きがいが創造されることもあるでしょう。
板橋区の特徴と老人ホーム・介護施設の現状
魅力の高さが人口増に結びついた板橋区
板橋区は、東京都特別区のひとつで、23区北部に位置します。東側は北区に、南側は豊島区、西側は練馬区、北側は埼玉県和光市および戸田市と接しています。区の形はやや南北に長く、区の北部は東西方向に広くなっています。
面積は32平方キロメートルほどで、東京23区では9番目の広さです。一番広い大田区の半分強、一番狭い台東区の3倍ほどの面積ですから、23区のなかでは広めといえます。
2018年4月現在の人口は56.3万人程度で、23区西部の杉並区とだいたい同じです。都内では八王子市、近隣では埼玉県川口市、県庁所在地クラスでは鹿児島市に匹敵する人口規模となります。
第二次世界大戦後、板橋区に住む人は、増加を続けてきました。国勢調査を見ると、1960年から65年、1985年から90年にかけての2回だけは人口の減少が見られたのですが、それ以外は増加しています。特に近年、都心回帰の動きが顕著になったこともあり、人口増加の傾向が強まっています。
板橋区の交通
老人ホームに入居する高齢者の家族にとって重要になるのが、老人ホームまでの交通です。通うことが不便な地域だと、だんだん足が遠のいてしまう可能性もあるため、なるべく自宅や職場近く、または電車一本で行けるなど、移動の負担が少ないエリア内で老人ホームを見つけたいところです。
鉄道では、高島平から都心に直行する都営三田線が区内を貫いています。また、池袋と川越市を結ぶ東武東上線も、区内を縦断していますし、練馬区との境界付近からは、地下鉄有楽町線あるいは副都心線が利用できます。区の東側では、JR埼京線を便利に使うことができます。
区内各地域からは、東京都心はもちろん、池袋や新宿、渋谷といった副都心、あるいは埼玉県のさいたま市、川越市方面へのアクセスが良好です。
道路交通も、南北方向には首都高速5号線(池袋線)あるいは中山道(国道17号線)、川越街道(国道254号線)が走っています。東西方向には東京の大動脈ともいうべき環状7号線、環状8号線が通っています。
電車では南北の交通が不便な部分もありますが、多数のバス路線があるため、電車などと併用すれば問題なく各地に移動できるでしょう。
高島平にはトラックターミナルも立地しています。板橋区の、東京の北の玄関口としての役割は、今も昔も変わらないことを感じることができます。
なお、板橋区は近接する市区との往来が容易です。荒川をはさんでしまう埼玉県戸田市あるいは川口市に関してはやや不便ですが、北区および豊島区、練馬区、埼玉県和光市とは、境界がどこにあるのかわからないくらいです。地域密着型の施設でなければ、近隣市区の老人ホームの利用も、十分検討に値するといえます。
板橋区の老人ホーム事情
都市的な機能性と、思いのほか豊かな自然環境が魅力の板橋区ですが、人によっては終の住処となることもある老人ホームの整備状況はどうでしょうか。2018年4月時点のデータを軸に、まずは施設種別ごとに見ていきましょう。
入居型の介護施設のうち、代表格といえるのが有料老人ホームです。有料老人ホームは、43の施設があり、定員は2,400人を超えます。内訳は、施設で介護サービスを提供する介護付き有料老人ホームが34施設、ほかの介護事業所などと別途契約を結んで介護サービスを受ける住宅型有料老人ホームが9施設。介護サービスを行っている施設の比率が高めといえるでしょう。
入居型の公的な介護施設である、特別養護老人ホーム(特養)は16施設、定員は1,655人です。有料老人ホームと比較すると施設数は少なく感じると思いますが、特養は1施設あたりの定員が大きくなる傾向があります。
ゆえに、定員という視点からは、施設は少なくはありません。ただし「要介護3以上」が入居の条件である特養は、元気なうちから探す施設とは考えにくいことにご留意ください。
所在地も区内各地域にほどよく散らばっています。人気が高い特養では入居待ちが発生しますが、板橋区内の施設については、インターネットを使って待ち状況の確認ができます。
都市型軽費老人ホームは区内に5施設あり、定員は90名となっています。こちらは、比較的低い費用負担で入居できる、自立した日常生活に不安がある60歳以上の方向けの施設です。
また、自宅に近いかたちでの生活ができるグループホームは区内に25施設、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が22施設あります。グループホーム、サ高住とも施設数は多く、選択の幅も広いといえます。
グループホームは認知症を持つ高齢者にとっての選択肢のひとつですが、ほかにも認知症高齢者が入居できる施設種類がありますので、有料老人ホームや特別養護老人ホームなどを探してみてもよいでしょう。
ところで、板橋区では「医療・介護・障がい福祉連携MAPシステム」というサイトを公開しています。このサイトでは、有料老人ホームをはじめとした各施設の情報や介護サービス事業者などの情報がまとめられています。
施設の詳細情報は掲載されていないので、詳細は他の老人ホーム検索サイト、または老人ホームのHPなどを調べてみるとよいでしょう。オアシスナビでは2018年5月現在、板橋区内の老人ホームを100以上紹介しています。ぜひ、あわせてご利用ください。
板橋区の有料老人ホーム
さて、板橋区内の有料老人ホームは前述の通り43あります。公表されているのは数箇所ですが、開設予定の有料老人ホームもありますので、施設探しには困らないといえるでしょう。
これらのうち、自立状態でも入居可能な有料老人ホームは29施設です。そのすべてが要介護状態になっても、継続して住むことができるので、元気なうちから、安心して暮らすことができる有料老人ホームを探しておくことも十分可能です。
後述しますが、板橋区には大規模な病院が複数あるなど、医療機関も充実しています。区役所の福祉情報提供サービスも充実していますから、板橋区内の有料老人ホームは、区外、都外在住の方でも、十分に選択の対象となるのではないでしょうか。
有料老人ホーム探しでの一般的な注意点ですが、施設により、対応可能な要介護状態が違ってきます。住宅型有料老人ホームの場合は、高い要介護度に対応できないこともありますので、事前に確認しておきましょう。
介護付き有料老人ホームでは介護サービスの提供があっても、対応できる医療ケアは施設ごとに差があります。必要なケアは何か、欲しいケアは何か、こだわり条件を指定して施設を探すには、オアシスナビをご活用ください。
また、有料老人ホームは、施設による提供サービスの違いも大きくなります。東京という土地柄、いろいろな要望を持つ人が集まってきます。板橋区にも、高度な医療サポート体制や豪華な食事、豊富なレクリエーションを持つ高級な施設がありますし、入居時費用や月額費用がリーズナブルな施設もあります。
これらも、探す側にはこだわりのポイントとなります。当サイトの検索ページでは、予算など条件面の指定もできます。施設を探す時に、希望にあった施設を絞り込むという作業は、とても時間がかかります。板橋区のように、施設数が多いエリアでは、違いが大きいといえるでしょう。
板橋区は医療施設も充実
高齢になるとどうしても医療機関のお世話になる機会が増えるだけに、病院などの医療系施設の状況も気になるところです。意外と知られていませんが、板橋区における病院・診療所の病床数は、23区のトップです。
板橋区には、区の南西部、板橋本町と大山の2箇所に、病床数1,000を超える大学医学部の附属病院があります。それ以外にも、都立だった豊島病院、あるいは東京都健康長寿医療センターといった病床数500を上回る大規模な病院があるなど、医療へのアクセスには恵まれているといえます。
安心した暮らしを求めるのであれば、この、医療の充実ぶりは大きなポイントといえます。医療の面において、板橋区は実に恵まれたエリアであるといえそうです。
板橋区の高齢化率と地域包括ケアシステム
さて、板橋区の高齢化事情について、概要を見てみましょう。2018年4月時点のデータになりますが、板橋区における65歳以上の高齢者人口は13万人弱で、高齢化率は23.1%となります。これは全国平均に比較するとかなり低いのですが、東京23区の平均である21.1%に比較すると2ポイントほど高い数値となります。
この数値からは、板橋区は23区内でも、比較的高齢化が進んでいると考えることができます。ですが実は、板橋区は日本経済新聞社産業地域研究所が2015年に実施した「第二回 介護・高齢化対応度調査」で、全国総合首位に輝いています。また、前述の通りで医療機関も充実していますから、超高齢社会への備えは充実しています。
それでも、高齢者の絶対数は増加し、支える側の現役世代の人口比率は低下していきます。2025年の板橋区の高齢化率は27.3%になる見込みです。現状のサービスレベルを維持することには、かなりな困難を伴うであろうことは、容易に想像できるでしょう。
そのための切り札ともいえるのが、「地域包括ケアシステム」の構築です。全国各地で意欲的な取り組みが行われていますが、板橋区ではその取り組みを「板橋区版AIP」と名付けました。AIPとは、「年を重ねても安心して住み慣れた地域に住み続けること」を意味する、Aging In Placeの頭文字をとったものです。
板橋区版AIPには、いくつかの重点分野があります。その中で最初に挙げられているのが「介護予防・日常生活支援総合事業の充実」です。高齢になっても、心身の状態が良好であれば、支える側に回って活躍することができます。そのことは、高齢者にとっても誇りになりますし、そこから生きがいが創造されることもあるでしょう。
行政が率先して絆づくりを推進する板橋区
また、「助け合い・支え合いの地域づくりの推進」もうたわれています。大都市部では人とのつながりが希薄になる傾向がありますが、そこの触媒として、この板橋区版AIPが果たす役割は大きなものになるでしょう。認知症に関する啓発や情報共有の場を提供するなど、取り組みが高い評価を得た板橋区らしさが伝わってきます。
もちろん、現実は決して楽観できるものではありません。板橋区における要介護認定者の人数は、17,000人強だった2008年から10年後、2018年には24,500人近くまで伸びています。要介護認定者は10年間で約7,000人の増加です。
また、65歳以上の人口から見た比率は、18.9%、全人口に対する後期高齢者の比率も11.5%となっています。
現在の日本においてこれらは、突出して高い数字ではないかも知れません。しかし、板橋区でも人類がこれまで経験したことのない高齢社会に進んでいることは、間違いのないところでしょう。それだからこそ、板橋区の取り組み、特に高齢社会や認知症に関する啓発活動に重きを置いていることは、注目すべきポイントといえるのです。
幸福な老後が約束されてこそ、幸福な人生を過ごすことができるといえるでしょう。医療機関の充実というアドバンテージを持ち、横断的な福祉情報の提供にも積極的な板橋区は、安心の地域であるといえるのではないでしょうか。
さて、板橋区の区の花はニリンソウです。ヒット曲の題材に取り上げられたこともある山野草で、春、他の草花が芽吹く前に、可憐な花を咲かせることで知られます。
板橋区版AIPなどの高齢者政策からは、しっかり地域に根をおろし、他の先駆けとなるような地域包括ケアシステムを、確実に構築することを目指すという意欲を、感じることでしょう。その取り組み姿勢は、区の花ニリンソウの姿のように、思いやりに満ちあふれています。
緑が多く季節を感じる板橋区
板橋区は、五街道のひとつ、中山道最初の宿場「板橋宿」を中心にして、東京の北の玄関口として発展してきました。かつては田畑も広がり、東京の食料供給地としての役割も担ってきました。
変化の契機となったのは、1923年の関東大震災です。地震の被害が少なかった板橋区には、多くの人が移り住み、工場も進出してきました。
近代化の過程で農地は大きく減少しましたが、1960年代前半までは高島平地域を中心に水田も残っていました。団地の開発などにより水田はなくなったものの、21世紀に入ってからも、高台の地域を中心に、農地は残っています。
このように、もともと自然環境や農地に恵まれていた板橋区には、公園などの緑地が各地にあります。都市公園の総数は300を超え、23区内でも上位に位置します。季節の景観にも恵まれており、中でも春の石神井川の桜並木、秋の赤塚公園の紅葉はよく知られています。このような季節の移り変わりがはっきり感じられる地域であれば、老人ホームに入居してからも毎日の散歩が楽しめそうです。
区の北部にある荒川戸田橋緑地には、運動施設が多くあります。この緑地を中心に、春には板橋シティマラソン、夏には花火大会などが開催されることで、区外でもよく知られています。
また、板橋区は坂が多い地域です。立体感のある地形は、美しい風景を作り出します。このように、人をひきつける豊かな魅力を持つ板橋区で老人ホームを探してみてはいかがでしょうか。