記事公開日 2022/05/28
記事公開日 2022/05/28
有料老人ホームに入居するまでにしなければならないこと・したほうがいいことは、ある程度流れが決まっており、施設ごとにそれほど大きな違いはありません。
ここでは、入居までに何を行うか、9つのステップと3つのポイントでわかりやすく説明します。
最初のステップは、お目当ての有料老人ホームを絞り込むことです。現在、有料老人ホームの数は飛躍的に増えており、施設それぞれに個性もあります。
もちろん、入居を予定される方にも家族にも、こだわりたい条件やかなえたい希望があるでしょう。
たとえば、夫婦で入居したい、大浴場のある施設がいい、あるいはペットを連れていきたい。他にも費用面の条件も重要ですし、介護の体制や施設の場所などにもこだわりがある方がほとんどです。
希望の条件を挙げていけば、キリがないほどに増えていくかと思います。まずは条件を整理するところからはじめましょう。
払える費用や施設の立地を含めたぜったいにゆずれない最低限の条件を出し、次にできたらかなえたい希望も書き出すなどしておきます。
たくさんの施設の詳細を見ていると、あれもこれもとつい欲張りになってしまうものです。書き出した条件以外はあまり気にしないようにすれば探しやすくなります。
また、条件にあった老人ホームを一件一件探していてはキリがありません。そんなときにはインターネットが便利です。
老人ホーム検索サイトであれば、こだわり条件を設定できるなど、施設選定の作業がとても楽になります。活用してみるとよいでしょう。
ここで重要なのは、いくつかの有料老人ホームを候補として挙げることです。そして、候補となった複数の施設へ資料を請求して取り寄せます。ここまでが、最初のステップとなります。
すべての有料老人ホームから資料が到着したところで、それらの資料をすべて並べて比較・検討を行います。
インターネットで見ているだけではわからない違いが、資料を比較することで見えてくることも多いのです。
比較したら、入居予定者や家族の希望により近い施設をいくつか選びます。ここでも、複数の施設を選ぶことが大切です。選んだら施設に問い合わせをしましょう。
こういった問い合わせは、電話はもちろん、ホームページやメールで受け付けている施設も多くあります。ですが、時間的に問い合わせ窓口へ電話を入れることが難しいといった事情がない限りは、電話で問い合わせることをおすすめします。
文字だけのやりとりより、会話のほうがよりお互いに伝えたいことが伝えやすくなるからです。
また、電話で話したスタッフの対応によって、その施設の良し悪しが見えてくる場合もあります。電話対応もチェックポイントのひとつにするとよいかもしれません。
問い合わせの際は、施設への入居を検討していることを忘れずに伝えましょう。多くの場合、施設見学の予約を受け付けるという流れになります。
なお、複数の施設に問い合わせるわけですから、見学の日程が重ならないように注意しましょう。
インターネットや資料によって、施設の大まかな姿は想像できているでしょう。しかし、その老人ホームについてより深く知るためには、施設見学がとても大きな効果を発揮します。
見学時には、施設のスタッフから設備やサービスの内容について説明を受けます。実際に設備やスタッフ、入居者の姿を目にすることで、パンフレットを見るだけではわからない、入居後の姿をよりイメージしやすくなるでしょう。
なお、施設見学をする前には、その施設について知りたいことをピックアップし、整理しておくことをおすすめします。細かなことと思わず遠慮せずに質問して、疑問点を解消することが重要です。
疑問を持ったまま入居すると、あとになって「あの疑問を解消していたら入居を決めていなかったのに……」となる可能性も。気になることは必ず納得できるまで質問しましょう。
実際にいくつかの有料老人ホームを見学することで、さらに候補を絞り込むことができると思います。絞り込んだら次のステップです。
その次のステップとして、できればしておきたいのが体験入居です。
体験入居には費用が発生しますし、すべての施設でできるわけではありません。ですが、可能な有料老人ホームも多いですから、入居の本命と感じた施設を中心にぜひ活用したいところです。
体験入居をする方法は簡単です。電話などで体験入居を希望していると伝えれば、詳しく説明してもらえます。見学のときに質問しておいてもよいでしょう。
詳細については施設ごとに異なりますが、期間はおおむね1泊2日から1週間程度。なかには1カ月ほど体験入居できる施設もあり、費用は1泊あたりで計算されます。
体験入居のメリットは、施設での生活がより明確にわかることです。 入居時に受けるサービスや生活の様子は、パンフレットや施設見学からもおおよその内容をつかむことができます。とはいえ、本人が実際に寝泊りすることで見えてくる部分も少なからずあるものです。
また、体験入居をする前にも、特に知っておきたいポイントをあらかじめ整理しておくことをおすすめします。
職員の対応や食事の様子、居心地のよさなどは、時間がたつと印象が薄くなってしまうことも多いものです。気になる点は意識してチェックしましょう。
体験入居時、すでに入居している利用者とできるだけ話をしてみることも有効です。リアルな口コミは参考になることも多いでしょう。
有料老人ホームへの見学や体験入居を経て、「この施設に入りたい」という気持ちが固まったら、入居の申し込みをします。
電話での入居申し込みを受け付けている施設もありますが、多くの場合「入居申込書」といった書類の記入が必要です。
なお、申し込みの際に一定の費用が必要な施設もありますし、それ以外にも、希望する居室の仮押さえ費用が発生することもあります。
これらの金額は施設により大きく変わります。申込時に発生する費用がどのような性質のものか、キャンセルになった場合にどのように扱われるのか、念入りに確認しておいたほうがよいでしょう。
申し込みが終わってからも、契約までにはさまざまな準備が必要です。
入居の申し込みをしたら、契約までに必要な書類を用意します。必要となる書類は施設により違いますので、施設からの指定に従います。わからないことがあれば、遠慮なく施設の担当者に確認しましょう。
必要書類として特徴的なものは、健康診断書あるいは主治医からの診療情報提供書などが挙げられます。
有料老人ホームは高齢者の入居施設という性質上、入居希望者の健康状態あるいは必要な医療サポートがどのようなものか、施設側は把握する必要があるからです。
契約のために必要な書類を提出すると、施設により書類による事前審査が行われます。
入居希望者の健康状態などを検討し、施設側で入居後に十分なケアが提供できないと判断した場合などは、この時点で断られることもあります。
書類を提出したのち、面談により入居希望者の要望や身体の状態を確認します。このとき、入居希望者の家族なども同席を求められることがあります。
新たな疑問が生まれた場合には、この時点で質問をして、しっかり確認をしておきましょう。
要望の詳細や健康状態を実際に確認したあと、入居の審査が行われます。入居希望者の要望を叶えることが厳しい、あるいはサポートが難しいといった理由から、入居不可という判断が示されることもあります。
しかし、これはお互いの不幸を防ぐためのことです。万が一断られたとしても、決して落ち込まないでください。
審査が終了して入居がOKとなったら、契約を行います。契約書あるいは重要事項説明書などの書類を元にして、施設から説明があります。
これらの書類については「文面が難しい」「文字が細かい」といった理由で、つい読み飛ばしてしまいがちになります。
しかし、契約書や重要事項説明書には、入居後に関わるさまざまな決まりごとが書かれています。
決して読み飛ばすことなく、わかりにくいところ、わからないところがあったら、積極的に質問して内容を確認するようにしましょう。
特に入居後の利用料金など、お金に関わる部分はしっかり確認しておきましょう。毎月の利用料金にはどこまで含まれるのか、利用料金の他に必要となる費用や、目安となる金額についても聞いておきましょう。
また入居一時金の扱いに関しても、しっかり説明を受けることが重要です。特にトラブルになりやすいのが、入居一時金の返還に関してです。償却期間など少々複雑なので、必ず理解するようにしましょう。
なお、契約に際して身元引受人や連帯保証人が必要になる場合があります。施設から指示がありますので、それに従いましょう。
また、この時点までに入居に必要な料金が提示されます。指定された金額を、提示された支払い方法で期日までに払い込むことも必要です。
ここまでに、施設との間で取り交わされるすべての手続きが整いました。この時点では入居日も決まっているはずなので、その日には引っ越しを行い、晴れて新しい生活のスタートとなります。
なお、有料老人ホームへの入居時には、生活用品や家具類が必要になることがあります。たとえばベッドなどの寝具やテレビなどの娯楽用の器具、冷蔵庫などの家庭電化製品、収納家具などです。
やはり、施設により必要となるものは違ってきますので、あらかじめ確認し、必要なものは用意しておきましょう。
自身で対応できない大型の家具類の搬入が必要な場合は、運送業者を手配しておくといいでしょう。家具の組み立てといった手間のかかる作業を、行ってもらえることも多いです。
入居日になったら引越しをし、有料老人ホームでの生活がスタートとなります。
この9つのステップで、有料老人ホームを探すところから入居までの流れがイメージできたのではないでしょうか。
なお、ここで示したのはあくまで一例であり、実際には順番が入れ替わる、省略されるステップがある、あるいはないなど、必ずしもこの流れ通りに進むわけではありません。
実際の流れは、希望する有料老人ホームの説明に従ってください。
有料老人ホームへ入居するまでの流れの中で大切なのは、わからないことは施設側に質問して、その都度解消していくことでしょう。
入居までのステップにより、わからないことは変化していくものですから、気になった疑問を都度質問することも、遠慮することはありません。
小さな疑問が入居後の大きな問題につながることも十分ありえます。有料老人ホームへの入居で発生する金額は小さなものではありません。
後悔がないようにするためには、小さな疑問であっても残さないようにすることが大切だといえます。
お互いの確認不足が不幸な結果を招くことは、残念ながら決して少なくありません。疑問点は納得がいくまで確認しておきましょう。
また、施設側は、契約内容を十分に説明する義務がありますので、細かな質問は歓迎されることも多いのです。
契約書はもちろんですが、重要事項説明書も大切なポイントです。施設の職員体制や運営会社についてなど、基本的な情報について詳しく記されています。
重要事項説明書でまず注意するのは、要介護度が上がった場合の規定です。住み替えや退去が必要になるのか、なるとすればどのようなケースが該当するのかは、必ず確認しておきましょう。
また、要介護度の上昇以外にも、退去が必要になる場合が規定されていることもあります。
さらに、お金に関係する決まりごとも必ず確認しておきましょう。
月々の利用料金や介護保険を利用できるサービスといった、入居後の生活に直結する内容だけでなく、退去するときの返還金を算定する方法についても、こういった書類に記載されています。
退去することを想定して入居することは少ないと思いますが、入居後の生活が思い描いていたものと違っていたり、長期の入院が必要になったりなど、退去を選択する可能性も十分あります。
入居一時金の返還額などをめぐってトラブルが発生することも少なくないため、退去時のお金の扱いも十分に確認することが必要です。
入居の決定は、入居者側が重要事項説明書や契約書の内容をすべて承知したことを意味します。
万一トラブルが発生した場合にも、この重要事項説明書に記載された通りに、処理が進められることが多くなりますが、内容を理解しないままに「こんなはずでは……」と不満を募らせてしまうのは、お互いに不幸になります。
重要事項説明書には、それだけ大切な内容が記されているのです。
有料老人ホームへの入居は、早ければ2週間前後で可能となります。老人ホーム探しは急ぐ方が多い傾向がありますが、施設への入居はそれなりのお金が必要になる重要な決断です。
入居希望者にあった有料老人ホームを探すことを第一に考えるのであれば、複数の施設を比較して検討したいところです。
そのためには、何よりも入居する施設を慌てて決めない、その場の空気や流れだけで決めないといったことが大切になります。できれば、必要に迫られてあわてて探すのではなく、元気なうちから目星をつけておくのがよいでしょう。
終の住み処になるかもしれない有料老人ホーム選びは、かなり手間のかかる作業となります。しかしこの手順を踏まえることで、入居する本人が思い描くかたちに近い施設を選ぶことができます。
納得のいく施設を見つけるためにも、可能な限り急ぐことなく施設探しを行いましょう。