特養の人員配置基準とは?従来型とユニット型の基準から夜勤職員まで

記事公開日 2023/07/07

記事公開日 2023/07/07

特養の人員配置基準

特養では、入居者が安心して暮らせるように職員の人員配置基準が決められています。人員配置基準とは、介護職員や看護職員など、どの職種が何人必要なのかを定めた基準です。
ここでは、それぞれの職種の詳しい人員配置基準や役割、ユニット型での基準、夜間帯の人員配置についても解説します。

特別養護老人ホーム(特養)とは

特別養護老人ホームは、自宅での生活が困難な高齢者に対して、必要な支援や介護を提供する施設です。
入浴や排泄などの介護、日常生活の世話、健康管理、機能訓練、毎日の食事などのサービスを提供します。

入居の対象者は原則要介護3以上ですが、要介護1・2の方でも緊急性が高いと判断されると特例での入居が可能です。

従来型とユニット型の違い

特養には従来型とユニット型の2種類があり、それぞれに特徴があります。人員配置基準の違いもありますが、ここでは居室やケア方法などの特徴を解説します。

従来型

従来型の部屋タイプには、多床室と個室があります。

従来型の多くが多床室となっており、1部屋を4人以下の複数人で使用します。それぞれのスペースはカーテンなどで簡易的に仕切られています。
個室の場合は1人1部屋での利用が可能です。

どちらもリビング・食堂などの共有空間は独立しており、多くの入居者や職員が出入りします。
ケア方法は、複数の入居者を複数の介護職員でケアするスタイルです。

ユニット型

ユニット型は1ユニット当たり9人ほどの入居者をひとつのグループとして、少人数で共同生活を送ります。
ユニット型の居室はすべて個室です。プライバシーを確保しながら、自宅に近い住環境で生活リズムや個性を尊重したケアを行います。

1つの大部屋を簡易的な壁などで仕切り、個室のように利用できるユニット型個室的多床室というタイプの居室もあります。

どちらも共有空間のリビングを囲むように居室が配置されているため、他の入居者との交流がしやすく、家庭的な雰囲気の中で過ごせます。

また、ユニット型では専属の介護スタッフや看護スタッフが配置されるため、入居者一人ひとりに合わせた手厚いケアが提供されることも特徴です。

特養の部屋タイプについて詳しくはこちら

老人ホーム相談室LP

特養の人員配置基準とは?必要な職種とその役割

特養の人員配置基準/必要な職種とその役割

人員配置基準とは、介護施設などで適切なサービスを提供するために必要な人材の配置基準です。施設を運営するためには、この基準を満たす必要があります。
特別養護老人ホームの基本的な人員配置基準は以下の通りです。

施設長の人員配置基準・役割について

特養の施設長の人員配置基準は常勤で1名と定められています。
原則専従ですが、業務に支障が出なければ兼務も可能です。たとえば、介護業務との兼務、同じ敷地内にある別の事業所やサテライト型居住施設の職務との兼務などが対象です。

特養の施設長になるためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

・社会福祉主事の要件を満たす者
・社会福祉事業に2年以上従事した者
・社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者

施設長の主な役割は、施設全体のマネジメントです。
たとえば、介護計画に沿った適切なサービスを提供できているかの確認や、職員の採用、サービスの質を維持するための教育などを行います。

また、入居者が入居するときや家族から相談があったときなどには面談をします。
契約関連や収支の管理も行うなど、施設長は施設全体の管理業務を担う責任者として重要な存在です。

医師の人員配置基準・役割について

特養の医師の人員配置基準は必要な数とされており、入居者の療養上の指導・健康管理に必要な人数が配置されます。
そのため、非常勤の医師が週に数日程度などの割合で訪問することが多くなっています。

特養の医師の主な役割は、入居者の健康管理と療養上の指導をすることです。
入居者の診察や処置、処方箋の発行、定期健康診断の実施、感染症の予防接種、外部の医療機関との連携、ターミナルケアや看取りにも関わります。

また、サービス担当者会議では、入居者が心身の状態に合わせたケアを受けられるよう専門職として意見を出します。
入居者の健康を守るのが、特養の医師の主な役割です。

介護職員の人員配置基準・役割について

入居者数3名(またはその端数が増えるごと)につき、介護職員または看護職員が1名以上と定められています。

原則専従ですが、業務に支障が出ない場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)や機能訓練指導員などとの兼務が可能です。

特養の介護職員の役割は、入居者が安心した生活を送れるようにサポートを行うことです。
具体的には、入浴や排泄、食事などの介助やシーツ交換など日常生活の支援、レクリエーションの実施をするほか、家族への状態報告等の連絡やサービス担当者会議に参加することも仕事のうちです。

また、機能訓練指導員などと協力して、入居者ができる限り自立した生活を送れるように身体機能の維持・回復もサポートするなど、特養の介護職員は入居者の自立に向けたサポートを担っています。

看護職員の人員配置基準・役割について

特養の看護職員の人員配置基準は1名以上ですが、30~ 50名の施設では2名以上、51~ 130名の施設では3名以上が必要です。看護職員とは、看護師もしくは准看護師を指します。

看護職員が夜勤をする特養もありますが、24時間の配置義務はありません。その代わり、夜間の緊急時にはオンコールで対応します。

看護職員は原則専従ですが、業務に支障が出ない場合は介護職員と同様に、介護支援専門員(ケアマネジャー)や機能訓練指導員などとの兼務が可能です。

特養の看護職員は、主に入居者の健康管理を担っています。
具体的には、入居者の服薬管理や緊急時の応急処置、嚥下状態に応じた食事指導などです。施設によっては、在宅酸素、経管栄養、インスリン注射、喀痰吸引などの医療ケアを行います。

特養の入居者は要介護度が高く医療ニーズも少なくないため、重要な役割といえるでしょう。

生活相談員の人員配置基準・役割について

生活相談員の人員配置基準は、入居者数が100名(またはその端数が増えるごと)に1名以上です。

常勤かつ原則として専従ですが、業務に支障が出ない場合は、介護支援専門員(ケアマネジャー)や機能訓練指導員などと兼務も可能です。

特養の生活相談員には、入居者やその家族からの相談対応、施設内外での連携や調整をする役割があります。
入居者や家族に特養で生活するうえでの問題や希望を聞いて、必要な支援を受けられるようサポートするほか、入居や退去の際に必要な手続き、クレームへの対応も生活相談員の仕事です。

ほかにも、サービス担当者会議への参加や、必要に応じて医療機関・行政機関への連絡なども行います。

機能訓練指導員の人員配置基準・役割について

機能訓練指導員の人員配置基準は1名以上で、同じ施設の他の職務と兼務が可能です。
機能訓練指導員になるには、以下の資格のいずれかが必要です。

・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・看護職員
・柔道整復師
・あん摩マッサージ指圧師
・6カ月以上の実務経験を持つ鍼灸師(はり師・きゅう師)

特養の機能訓練指導員の役割は、日常生活動作や家事をするための動作、身体機能の維持・向上などに必要なリハビリを提供することです。

入居者ができるだけ自立した生活を送れるように、一人ひとりの状態や希望に合わせた訓練を実施します。
具体的には、食事や排泄、更衣、ベッドからの離床訓練、車椅子の移乗訓練、歩行訓練などです。また、趣味や社会参加のために必要な機能訓練を行うこともあります。

介護支援専門員(ケアマネジャー)の人員配置基準・役割について

介護支援専門員とはケアマネジャーのことで、人員配置は入居者数が100名(またはその端数が増えるごと)に1名となっています。
常勤かつ原則として専従ですが、業務に支障が出ない場合は同じ施設内の他の職務と兼務が可能です。

特養の介護支援専門員の役割は、入居者が適切なサービスを利用できるようにケアプランを作成し、サービスを受けるための調整を行うことです。
入居者ができる限り自立した生活を送れるよう、一人ひとりの心身の状態に合わせたケアプランを作成します。

サービス担当者会議では、入居者にとってより良い施設サービス計画となるように情報の共有などを行います。入居者やそのご家族、施設のスタッフが意見を交換し、最終的には入居者本人や家族に説明をして同意を得ることが必要です。
そのほかにも、要介護認定の申請手続きなども担っています。

栄養士の人員配置基準・役割について

特養の栄養士の人員配置基準は1名以上です。ただし入所定員40人未満の施設では、入居者への対応に問題がないよう他の施設の栄養士と連携ができていれば、配置の必要はありません。

特養の栄養士の役割は、栄養バランスのとれた食事を提供することです。入居者一人ひとりの健康状態・栄養状態に合わせた栄養ケア計画を作成し、栄養管理や栄養指導も行います。

嚥下状態に合わせてきざみ食やミキサー食などを提供するほか、食事制限のある入居者には必要に応じて糖尿病食や減塩食などに対応することも仕事のうちです。

ユニット型の人員配置基準

ユニット型の人員配置基準

ユニット型の場合は、上記で紹介した特養の基本的な人員配置基準に加えて、以下の基準が必要です。なお、1つのユニットの定員はおおむね10人以下となります。

・昼間は1ユニットごとに常時1人以上の介護職員または看護職員を配置
・ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置

出典:厚生労働省「介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)

厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査結果」によると、2019年度決算時における従来型の介護・看護職員1人当たりの利用者数は平均2.2人であるのに対し、ユニット型では平均1.8人です(常勤換算)。
従来型と比較すると、ユニット型の人員配置は手厚くなっていることがわかります。

つまりユニット型では、介護職員や看護職員が入居者一人ひとりの心身の状態や生活習慣、個性などを把握しやすく、より尊厳を尊重したケアを行えるのです。

ユニットリーダーの人員配置基準・役割について

ユニットリーダーはいわばユニットの統括責任者で、ユニットごとに1人必要です。常勤での配置が定められています。

ユニットリーダーには、ユニットの責任者としての役割があります。介護業務を行いながら、介護職員の教育、シフト作成、レクリエーションやイベントの企画などをすることがユニットリーダーの仕事です。
入居者の家族への連絡や会議への参加、入居の際の面談を行うこともあります。

特養での夜勤職員の人員配置基準

前述した特養の人員配置基準は日勤帯の基準です。
特養ではほとんどの入居者が要介護3以上のため、夜間における介護職員(または看護職員)の人員配置も欠かせません。

従来型

従来型の夜勤職員の人員配置基準は下記の通りです。

従来型特養/夜勤職員の人員配置基準

ユニット型

ユニット型の場合は2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員の配置が必要です。
具体的には、以下のような配置になります。

・1ユニットの場合 1名以上の配置
・2ユニットの場合 1名以上の配置
・3ユニットの場合 2名以上の配置

特養には適切な人員配置基準がある

特養では、入居者が安心して暮らせるように、そして自立を目指せるように人員配置基準が決められています。
紹介した人員配置基準は最低限の基準です。それ以上に職員数が充実していれば、それだけ手厚いケアを受けられるということです。
施設を選ぶ際には、人員配置基準も確認してみてはいかがでしょうか。

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老人ホーム相談室LP

著者:オアシス介護

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