介護医療院とは?介護療養型医療施設との違いや費用、入居条件について解説

記事公開日 2022/10/07

記事公開日 2022/10/07

介護医療院とは

比較的新しい介護保険施設「介護医療院」。今後廃止される介護療養型医療施設の代替施設としても注目されています。
介護医療院の概要や入居条件、サービス、施設・人員基準などを詳しく解説しますので、ぜひ参考にご覧ください。

介護医療院とは?

介護医療院とは、要介護者に対し「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設のこと

(参照:厚生労働省「介護医療院 公式サイト」)

介護医療院は2018年に新設された介護保険施設のひとつです。介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)と並び、利用には介護保険が適用されます。

日常的な医学管理や看取り・ターミナルケアなどを行う医療機関としての機能と、生活施設としての機能を兼ね備えた施設として制度設計されました。

2021年12月末時点で全国に662の介護医療院が存在します。介護療養病床(介護療養型医療施設)や医療療養病床、老健からの移行も少なくありません。

介護医療院と介護療養型医療施設の違い

介護医療院と介護療養型医療施設の主な違いは以下です。

介護医療院
要介護高齢者の長期療養・生活のための施設

介護療養型医療施設
医療の必要な要介護高齢者のための長期療養施設

(参照:厚生労働省「介護医療院 公式サイト」)

介護療養型医療施設は、介護医療院が創設される以前に制度設計された医学管理が必要な要介護者のための長期療養施設です。
慢性期療養の病院に近い機能を持ち、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護や機能訓練などを提供しています。

しかし、高齢化が進むこれからの未来に向け、慢性期の医療ニーズに対応する医療・介護サービス提供体制の検討が必要になってきました。このニーズに伴い創設されたのが介護医療院です。

長期の療養に伴う入居者の「生活」に視点が注がれたこともあり、医学管理と家庭的な生活をともに重視する新たな施設として誕生しました。

介護療養型医療施設は2017年度末に廃止が決定しており、現行の施設は2024年3月末までに介護医療院などに移行となります。

介護医療院の種類と入居条件

介護医療院の種類と入居条件

Ⅰ型(介護療養病床相当)
入居条件:要介護1~5
主な利用者像:重篤な疾患を有している、身体合併症を有する認知症高齢者など

Ⅱ型(老人保健施設相当以上)
入居条件:要介護1~5
主な利用者像:Ⅰ型と比べ容態が安定している人

Ⅰ型、Ⅱ型ともに入居条件は変わりませんが、主な利用者像や医療・介護職員の人員配置が異なります。

Ⅰ型介護医療院

Ⅰ型は「介護療養病床相当」とされ、重篤な疾患を抱えている要介護状態の方などを入居の対象としています。

Ⅱ型と比べて介護職員だけでなく医師や薬剤師の配置人数が多く、より手厚い医療ケアを必要としている方が入居する施設という位置付けです。

Ⅰ型はさらに療養機能強化型Aと療養機能強化型Bに分類されています。
強化型Aの方が終末期のターミナルケア体制が整っており、基準以上の医療処置を受けている方の入居割合が高いという点が特徴です。

Ⅱ型介護医療院

Ⅱ型は「介護老人保健施設相当」とされています。
要介護者が長期療養できる施設という点ではⅠ型と共通していますが、Ⅰ型よりも容体が安定している要介護者の割合が大きいという特徴があります。

介護医療院で受けられるサービス

介護医療院で受けられる主な3つのサービスについて解説します。

医療ケア

介護医療院の大きな特徴ともいえるサービスです。日常の医療処置からターミナルケアまで幅広く対応してもらえます。

喀痰吸引や胃ろうによる栄養管理、点滴、酸素投与、褥瘡のケアなどが対応可能です。
医師や看護師の配置義務があるので適切な医療処置を受けることができ、必要があれば投薬や検査などにも対応しています。

介護サービス

食事介助、排泄介助、入浴介助といった介護サービスを受けることができます。医療ケアと介護サービスを兼ね備えている介護医療院は、入居者が安心して生活を送れる環境が整っているといえるでしょう。

必要に応じて理学療法士や作業療法士などによるリハビリテーションも行われ、またレクリエーションの時間もあります。

生活支援

介護医療院では、医療ケアや介護サービス以外に日常生活のサポートも受けられます。介護状態によって掃除や洗濯などを自力でできない場合には、生活支援の体制が整っています。

生活の場としてプライバシーが配慮され、地域住民との交流機会が用意されていることもあります。

介護医療院への入居でかかる費用

介護医療院の施設サービスには介護保険が適用され、介護度ごとに費用が異なります。
ひと月当たりの費用は、施設の分類(Ⅰ型・Ⅱ型)、部屋タイプ、居住費、食費、医療設備の充実度、施設の人員配置などによって変わり、およそ10万から20万円ほどで、入居一時金はかかりません。

Ⅰ型、Ⅱ型別のサービス費は以下です。

Ⅰ型のサービス費

「介護療養病床相当」とされるⅠ型は、入居者に対する職員の配置人数によって、(Ⅰ)強化型A相当、(Ⅱ)強化型B相当、(Ⅲ)強化型B相当と3つに分類され、基本報酬が異なります。

【Ⅰ型サービス費(多床室)】1日あたり
介護医療院Ⅰ型サービス費(多床室)料金表
※利用者1割負担で計算

Ⅱ型のサービス費

「介護老人保健施設相当」とされるⅡ型も、入居者に対する職員の配置数によって3つに分類され、転換老健相当の(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)となります。

【Ⅱ型サービス費(多床室)】1日あたり
介護医療院Ⅱ型サービス費(多床室)料金表
※利用者1割負担で計算

介護医療院の施設基準

介護医療院で入居者が生活する建物は、原則として建築基準法に基づく「耐火建築物」で、手すりや常夜灯の設置などが義務付けられています。

また、介護医療院には決められた施設基準があり、各設備は基準を満たしていることが必要です。
医療ケアに使われる療養室や処置室、生活の場となる食堂や談話室、レクリエーションルームなど、それぞれの設備について基準や特徴を解説します。

療養室

<施設基準>
・一室の定員4人以下
・一人当たりの床面積8㎡以上
・地下に設けない
・出入り口は避難上有効な空地や廊下、広間に直接面して設ける
・入居者のプライバシーに配慮した療養床を備える
・入居者の身の回り品を保管できる設備を備える
・ナースコールを設ける

療養室は入居者の主な生活の場として多くの時間を過ごす場所です。
介護医療院の療養室の特徴として、多床室でも1人あたりの床面積が8㎡以上と広く定められており、一般病棟よりもプライベートな空間を確保しやすい点が挙げられます。

診察室

<施設基準>
・医師が診察を行える
・喀痰、血液、尿、糞便等に関する臨床検査ができる
・調剤ができる

診察室は、主に医師が入居者を診察する際に使う設備です。臨床検査や調剤ができる環境が義務付けられています。
生活の場でありながら医師の診察が身近であることは、介護医療院の大きな特徴です。

処置室

<施設基準>
・入居者への処置が適切に行える広さがある
・規定に沿ったX線装置を備えている

入居者に対して医療的な処置を行うための設備です。一般的な病院と同じような処置が行える環境が整っており、X線を使用するレントゲン検査などもこの処置室で行われます。
それぞれの基準を満たしていれば、診察室と兼用することも可能です。

機能訓練室

<施設基準>
・40㎡以上の面積がある
・機能訓練に必要な機械および器具を備えている

理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職が、入居者に対してリハビリテーションを行うための設備です。
面積は40㎡以上の広さが義務付けられており、リハビリテーションに必要な器具や環境が整っています。

談話室

<施設基準>
・入居者同士または家族と談話を楽しめる程度の広さがある

入居者同士やその家族と会話をするためのスペースです。
介護医療院は医療的な側面だけでなく生活の場として役割も併せ持っているため、談話室があることによって他者との交流を楽しむことができます。

食堂

<施設基準>
・入居者1人に対し1㎡以上の面積がある

入居者が3食の食事を楽しめるスペースです。
一般的な病院ではベッドの上で食事をするケースが多いですが、介護医療院は食堂に集まって他の入居者や職員とコミュニケーションをとりながら食事を楽しめます。

浴室

<施設基準>
・身体が不自由な入居者の入浴に適している
・介助が必要な入居者の入浴に適した特別浴槽を設けている

入居者が入浴するための設備です。
入居の対象者を要介護1以上としている介護医療院では、身体が不自由でも円滑に入浴できる環境が整っています。一般浴槽のほか、要介護でも入浴できるように特別浴槽の設置が義務付けられています。

レクリエーションルーム

<施設基準>
・レクリエーションを実施するための十分な広さがある
・レクリエーションに必要な設備を備えている

入居者がレクリエーションを行うスペースです。レクリエーションは入居者が気持ちを豊かに過ごすために重要な要素であり、認知機能や身体機能の維持にも役立ちます。
特に、疾患を抱え気分転換の機会が少ない入居者にとっては、良い気分転換になるでしょう。どのようなレクリエーションが行われているかは施設によって異なります。

洗面所

<施設基準>
・身体が不自由な入居者の利用に適している

入居者が洗面や整容、口腔ケアなどをする場所です。
基本的には要介護状態の入居者が利用できるバリアフリー設計で、不自由なく利用できるようになっています。

トイレ

<施設基準>
・身体が不自由な入居者の利用に適している

入居者が排泄を行うための設備です。
体が不自由な方の利用や、職員による排泄介助が想定されているため、十分な広さや設備が備わっています。

介護医療院の人員基準

介護医療院の人員基準

介護医療院には職員の人員配置にも基準があります。入居者の人数に対する各職種の必要人数が決まっており、Ⅰ型とⅡ型によって人員配置基準が異なるという点がポイントです。
ここでは各職種の人員基準について解説します。

医師

<Ⅰ型>
・入居者48人につき1人
・施設で3人以上

<Ⅱ型>
・入居者100人につき1人
・施設で1人以上

医師は、入居者の診察や健康状態の管理をします。
入居施設でありながら医師が身近な介護医療院は、医療ニーズのある入居者に安心感を与えます。
また、Ⅰ型の介護医療院では医師の宿直があるため、入居者の体調が夜間に急変しても対応可能です。

介護職員

<Ⅰ型>
・入居者5人につき1人

<Ⅱ型>
・入居者6人につき1人

入居者に対して、食事や入浴、排泄などの介護サービスを提供する職種です。見守りやレクリエーションも実施します。
入居者との接点が多いので、入居者にとってもっとも身近な存在でしょう。

看護職員

<Ⅰ型>
・入居者6人につき1人

<Ⅱ型>
・入居者6人につき1人

入居者に対して、健康管理や医療的なケアをする職種です。
日々のバイタル測定などで入居者の健康状態をチェックし、医師の指示のもとで喀痰吸引や点滴、胃ろうの処置などの適切なケアを行います。

薬剤師

<Ⅰ型>
・入居者150人につき1人

<Ⅱ型>
・入居者300人につき1人

入居者に処方する薬剤を取り扱う専門職です。
介護医療院では診察室に調剤できる環境が整っており、医師の指示を受けて調剤を行います。

介護支援専門員(ケアマネジャー)

<Ⅰ型>
・入居者100人につき1人
・施設に1人以上

<Ⅱ型>
・入居者100人につき1人
・施設に1人以上

入居者一人ひとりにあったケアプランを作成します。
入居者のニーズを適切に判断したうえで情報を取りまとめ、目的に沿ったケアプランを立案します。状況に応じて計画の見直しを行い、入居者や家族、施設職員と検討・共有します。

リハビリ専門職

<Ⅰ型>
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を適当数

<Ⅱ型>
・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を適当数

入居者に対してリハビリテーションを行う専門職です。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が専門的な知識を駆使し、入居者に合ったリハビリテーションの計画・実施を行います。
介護医療院には機能訓練室の設置が義務付けられており、整った設備でリハビリテーションを受けることができます。

栄養士(または管理栄養士)

<Ⅰ型>
・入居者の定員100人以上で1人

<Ⅱ型>
・入居者の定員100人以上で1人

入居者の食事管理や毎日の献立立案をする専門職です。
入居者の健康状態を考慮した食事管理や、食事を楽しんでもらえるような計画を立案します。また、入居者の食事状況を観察し、嚥下の状況などに合わせた食事を提供します。

診療放射線技師

<Ⅰ型>
・適当数

<Ⅱ型>
・適当数(適正なサービスを確保できれば配置義務はない)

処置室にてレントゲン検査などの放射線を扱う専門職です。
医師の指示を受け、診察や治療に伴う検査や治療を行います。

調理員・事務員等

<Ⅰ型>
・適当数

<Ⅱ型>
・適当数(適正なサービスを確保できれば配置義務はない)

事務員は職員の勤怠管理や各種手続き、経理関連の業務などを行い、調理員は入居者用の食事を用意します。
入居者と直接関わる機会は少ないですが、介護医療院での大切な役割を担う職種です。

介護医療院は医療面が充実した介護保険施設

介護医療院は、これまでの介護療養型医療施設(療養病床)に代わる新しい形態の施設です。介護サービスを提供する介護保険施設でありながら医療面にも特化しているため、療養が必要な入居者やその家族は安心して過ごすことができるでしょう。

また余暇活動やレクリエーションも充実しているため、生活の場としてのニーズにも応えられる点が特徴です。

オアシス介護では、全国各地の介護施設情報を掲載しています。お住まいのエリアや入居条件、費用などをもとに絞り込み検索できるので、ご希望に合った施設を見つけてください。

老人ホーム相談室LP

著者:オアシス介護

関連の記事

介護医療院・療養病床