民間の事業所が運営している高齢者のための施設・高齢者住宅で有名なのが、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅でしょう。
公的に運営されている特別養護老人ホームなどに比べると費用は高めになりますが、そのぶん柔軟なサービス内容が魅力となります。
しかし、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では何が違うのか、少し違いがわかりにくいかもしれません。このふたつの種類について、どんな違いがあるのか詳しく見ていきましょう。
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅にはどんな違いがあるのか、細かく見ていく前に、まずは主な特徴を確認しておきましょう。
有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があり、それぞれ入居条件やサービス内容が異なります。
まずは、この3種類の有料老人ホームの違いを簡単に確認しておきます。
介護付き有料老人ホームは、施設スタッフによる24時間の介護を受けることが可能な施設です。食事介助・入浴介助などといった介護サービスを受けながら生活することができるため、要介護度が高くても安心して過ごすことができます。
介護士・看護師といった施設職員の割合や、設備に関する一定の基準をクリアした施設が、介護付き有料老人ホームとして登録することが可能です。
住宅型有料老人ホームは、介護付き有料老人ホームとは異なり施設スタッフによる介護サービスはありません。食事提供や掃除などの生活支援が主なサービス内容となります。身体介護を提供していないため、介護サービスを受けるためには外部の介護事業所などと別途契約を結ぶ必要があります。
健康型有料老人ホームは、介護を必要としておらず自立して生活することができる高齢者を対象としている有料老人ホームです。トレーニングジム、プールといった運動ができるスペースや、自立した生活を楽しめるような設備が整っていることがほとんどです。自立できなくなったときには退去する必要があります。
有料老人ホームのほとんどは介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームであり、健康型有料老人ホームは全国にわずかしかありません。
比較対象にするほど施設数はないので、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホーム、そしてサービス付き高齢者向け住宅を比較していきます。
サービス付き高齢者向け住宅は、略してサ高住やサ付きとも呼ばれています。
基本的には施設による介護サービスの提供はなく、義務付けられているサービスは、入居者の安否確認をすることや、生活に関する不安に対して生活相談のサービスを行なうこととなっています。
バリアフリーであることも高齢者には優しく、近年人気が増している住まいのかたちです。
またサービス付き高齢者向け住宅のなかには、特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設があります。この指定を受けたサ高住であれば、介護付き有料老人ホームと同じようなサービスを受けることが可能となります。
ただ、全体的な件数の割合は少ないため、基本的には特定施設ではないサービス付き高齢者向け住宅をメインに説明していきます。
有料老人ホームは老人福祉法に基づいた施設で、厚生労働省の管轄です。有料老人ホームの定義としては、食事の提供、介護の提供、清掃や洗濯といった生活支援の提供、健康管理のなかのひとつでもサービスを提供していれば、有料老人ホームに当てはめることができます。
しかし勝手に設置をして「有料老人ホーム」となることはできないので、都道府県知事に届け出ることも必要です。
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者の居住安定確保に関する法律(高齢者住まい法)によって創設されました。一人暮らしの高齢者や高齢夫婦のみの世帯が増加していくなかで、高齢者を支援するサービス提供のある住宅が求められたことによって、2011年に新しくできた高齢者のための住居のかたちです。
それに伴い、それまであった高齢者専用賃貸住宅(高専賃)や高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)はサービス付き高齢者向け住宅として統一されています。
登録や指導、監督は都道府県、政令指定都市、中核市によって行なわれ、国土交通省と厚生労働省の管轄となります。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居するための契約方式には、利用権方式、建物賃貸借方式と終身建物賃貸借方式の3種類があります。
利用権方式は、終身にわたって施設全体を利用できる権利が得られ、介護サービスなどの契約も一体となっている契約のことです。この契約は入居者本人に限られ、譲渡したり、亡くなったあとに子どもが相続するなどのことはできません。
建物賃貸借方式は、借地借家法が法的な根拠となっており、月々の家賃や管理費を支払って居住する契約です。利用権方式とは異なり、介護サービスなどの契約は別となります。
終身建物賃貸借方式は、入居者本人が亡くなるまで契約が続きますが、相続はできません。
国土交通省がまとめた資料によると、有料老人ホームでは利用権方式が、サービス付き高齢者向け住宅では建物賃貸借方式がもっとも多くなっています。
●有料老人ホーム
利用権方式 68%
建物賃貸借方式 27%
終身建物賃貸借方式 1%
●サービス付き高齢者向け住宅
利用権方式 16%
建物賃貸借方式 76%
終身建物賃貸借方式 5%
※無回答を除く
有料老人ホームは介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームの内訳がありませんが、おおむね利用権方式が介護付き有料老人ホーム、建物賃貸借方式が住宅型有料老人ホームであることが多いといえるでしょう。なお、終身建物賃貸借方式はほとんどありません。
それぞれのメリットとしては、利用権方式であれば最期まで同じ施設で生活しやすく、建物賃貸借方式であれば通常のマンションやアパート契約とさほど変わらないため、住み替えがしやすいといえます。
賃貸借方式が多いサービス付き高齢者向け住宅であれば、特別養護老人ホームに空きが出るまで、自宅の介護リフォームが終わるまでなど、少しだけ利用したいといったニーズにも応えやすいでしょう。
有料老人ホームの入居条件は65歳以上からとなっていることが多いようです。これは要介護度の入居条件にも連動しますが、施設によって要介護以上を受け入れていたり自立から受け入れていたりなどはさまざまです。
要介護以上の人であれば介護サービスの利用が必要になり、介護保険サービスを受けるためには65歳以上である必要が出てきます。
そのため、要介護以上を入居条件としている施設であれば、必然的に年齢は65歳以上となります。自立であれば介護の必要もないので、60歳以上などと設定していることもあるのです。
サービス付き高齢者向け住宅の入居条件は60歳以上で、基本的には自立や要支援、軽度の要介護者を対象としていることが多くなります。
有料老人ホームでもサービス付き高齢者向け住宅でも、特定疾病のある40歳以上は対象です。また、持病や認知症を持つ人に対しては、どこまで対応可能なのか施設によって異なります。
認知症の入居が可能であっても、他の入居者とのトラブルになるなど症状が悪化した場合や、持病が悪化して施設では対応できなくなった場合には、退去を求められるケースもあるので、対応可能な範囲を事前に確認しておくことが重要です。
特に、住宅型有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、そもそもは要介護度が高くない高齢者の入居を想定しています。実際には要介護度の重い高齢者が暮らせる施設も多数ありますが、入居条件や退去条件は各施設によって違いがあるので、注意しましょう。
まず、スタッフの人員配置について見てみましょう。
介護付き有料老人ホームの場合は、施設を運営するにあたって細かな決まりごとがあります。そのなかでは人員配置基準も決められています。
介護付き有料老人ホームは介護を行う施設であるため、入居者に最低限の介護を提供することを目的に介護保険法に基づいた人員配置基準が定められているのです。
●介護付き有料老人ホームの人員配置基準
・管理者 1人
・介護職員、看護職員 入居者3人:職員1人の割合で配置
・生活相談員 入居者100人:職員1人の割合で配置
・機能訓練指導員 1人以上
・介護支援専門員(ケアマネジャー) 1人以上
介護付き有料老人ホームの人員配置基準は、特定施設入居者生活介護の指定を受けるための基準です。そのため、この指定を受けているサービス付き高齢者向け住宅の人員配置基準も同じとなります。
通常のサービス付き高齢者向け住宅では、生活相談サービスと状況把握のためにケアの専門家が日中は常駐する必要があります。ケアの専門家は、医師や看護師、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士といった有資格者などが対象です。
住宅型有料老人ホームは、必要に応じて介護士や看護師などを配置すればよいとされています。
介護付き有料老人ホームは最低基準が決まっていますが、これ以上に職員を充実させている施設もあります。職員の数や専門職の種類が多いということは、それだけ充実したサービスがあるということです。
どんな人員配置で運営しているかは、各施設に確認するようにしましょう。
居室の広さや設備に関しても、それぞれに最低限の決まりがあります。
●有料老人ホーム
居室面積 13平方メートル以上
最低限必要な居室設備 ナースコールの設置
共用設備 食堂および機能訓練室、浴室、トイレ、洗面所、厨房、汚物処理室、医務室または健康管理室、談話室など
●サービス付き高齢者向け住宅
居室面積 原則25平方メートル以上
(その他の共有面積が十分な場合には18平方メートル以上でも可)
最低限必要な居室設備 トイレ、洗面、(浴室、キッチン、収納設備)
共用設備 条件によって、浴室、キッチン、収納設備は居室になくてもよいとされることがあり、その場合は共用設備となる
また、どちらであってもバリアフリー構造となっています。
これも人員配置基準と同じで、最低限の条件です。有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も、施設のこだわりによって居室を広めにしたり、設備を充実させたりなどさまざまなため、それぞれの詳細を確認する必要があります。
まず有料老人ホームでは、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームで介護サービスの違いがあります。簡単に言えば、介護がついている施設が介護付き有料老人ホームで、介護がついていない施設が住宅型有料老人ホームです。
介護付き有料老人ホームでは施設のスタッフによって介護が行なわれるため、24時間いつでも必要な介護を受けることができます。ちょっとだけ手伝ってほしいなどの要望にも応えやすい環境です。
一方、住宅型有料老人ホームには施設による介護サービスがありません。施設が行なうのは見守りや生活支援サービスが主になり、介護の必要性が出た場合は、施設外の介護サービス事業所を利用します。
なかには訪問介護事業所やデイサービスなどが施設に併設されていることもありますが、基本的には希望の事業所を入居者自身で選ぶことになります。利用できるのは、在宅介護と同じように訪問介護、訪問看護、デイサービス、通所リハなどとなり、ケアマネジャーと相談しながら必要な介護サービスの利用計画を立てます。
サービス付き高齢者向け住宅での介護サービスは、住宅型有料老人ホームと同じです。サ高住の場合にも、訪問介護事業所などが併設されていることもあります。
ただし、特定施設入居者生活介護の指定を受けたサービス付き高齢者向け住宅は例外です。
この特定施設となるには、職員の配置基準や施設の設備など、一定の基準をクリアする必要があり、この指定を受けたサ高住であれば、介護付き有料老人ホームと同じようなサービスを受けることができるのです。
同じサービス付き高齢者向け住宅でも、特定施設かどうかによってサービスの中身は大きく変わるので注意しましょう。
ただ現状では、特定施設入居者生活介護の指定を受けているサ高住は1割以下とごく少数です。希望する場合には、範囲を広げて探してみたほうがよいかもしれません。
まず、各施設種類の人員配置基準で、看護師の配置を必要としているのは介護付き有料老人ホームです。住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅では、看護師を含む医療職の配置が義務付けられていません。
そのため、施設での看護が可能なのは介護付き有料老人ホームのみとなります。
胃ろうを含む経管栄養やたんの吸引、ストーマの処置、褥瘡の処置、酸素療法など、多くの医療ケアが可能な施設もありますが、施設の体制によって異なるため、受け付けていない施設もあります。また、夜間も看護師が常駐している施設もあれば、オンコール対応を行なっている施設もあり、体制もさまざまです。
医療ケアが必要な場合には、その症状への処置が可能な介護付き有料老人ホームを探すとよいでしょう。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、看護師が常駐しているケースもありますが、訪問看護サービスを受けるなどが可能です。対応可能な時間なども確認しておくと安心です。
また、医師による往診はあっても、どの施設でも医師の常駐はないため、具合が悪くなったりケガをした際には医療機関でみてもらうことになります。
介護付き有料老人ホームでは、協力医療機関と連携することが必要なため、健康診断などもその医療機関が行なうことになります。医療法人が運営している施設であれば、より連携が整っている可能性が高いでしょう。なかにはクリニックを併設しているような施設もあります。
サービス付き高齢者向け住宅では、見守りと生活相談のサービスを行なうことが義務付けられているため、すべてのサ高住で受けることが可能です。見守りの方法はさまざまで、直接顔を合わせて確認するものから、センサーなどで間接的に見守るものなどがあります。
その他では、各施設種類がそれぞれに独自のサービスを行なっています。ほとんどの施設で食事の提供がありますし、レクリエーションやイベントも工夫を凝らしています。
これらに関しては、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅での差というよりは、施設ごとの運営方針による違いです。
食事だけをとっても、地元のこだわり食材を使った食事、シェフを起用した高級志向の食事、毎回2、3種類のメニューから好みのものを選べる、といったこだわりの食事を提供している施設もあれば、ほとんど調理の必要がない温めるだけの食事を提供する施設もあります。
また、オプションのサービスとして掃除や買物代行、理美容、各種手続き代行、外出時の付き添いなどが別途料金で提供されることもあります。
これらも施設によって異なり、基本料金に含まれている場合もあれば、そもそもこのようなサービスを提供していないこともあります。
野村総合研究所による2015年の報告書で、各施設種類における要介護3以上の割合が出ています。
要介護3以上の入居者が60%以上と答えた施設種類は、住宅型有料老人ホームがもっとも多く、特定施設のサービス付き高齢者向け住宅がもっとも低くなっています。
介護サービスの提供がある施設に重度の要介護者が多いというわけではなく、むしろ介護サービスのついていない施設のほうが要介護度の高い入居者の割合が高いという結果でした。
●要介護3以上の入居者が60%以上の割合
・介護付き有料老人ホーム 18.8%
・住宅型有料老人ホーム 38.3%
・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設) 12.9%
・サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) 11.5%
一方で、自立と要支援の入居者が30%以上を占めている割合は、サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)がもっとも高く、住宅型有料老人ホームがもっとも低いという結果です。
全体的にサービス付き高齢者向け住宅のほうが自立度の高い入居者が多いといえます。
●自立・要支援の入居者が60%以上の割合
・介護付き有料老人ホーム 11.4%
・住宅型有料老人ホーム 9.1%
・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設) 28.0%
・サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) 20.2%
次は、70歳未満の入居者が10%以上の割合で、年齢による違いを見ます。これは割合に大きな差があり、住宅型有料老人ホームとサ高住(非特定施設)は高く、介護付き有料老人ホームとサ高住(特定施設)は低くなっています。
●70歳未満の入居者が10%以上の割合
・介護付き有料老人ホーム 3.5%
・住宅型有料老人ホーム 27.3%
・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設) 21.0%
・サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) 6.4%
施設による介護サービスがない施設のほうが、年齢が低い入居者が多くなっています。
実際に、どの程度の症状の認知症を持つ利用者が入居しているのかを、「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅲ以上の高齢者が40%以上入居している割合と0%の割合で見てみます。
●認知症の程度Ⅲ以上の入居者が40%以上の割合
・介護付き有料老人ホーム 35.2%
・住宅型有料老人ホーム 43.8%
・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設) 19.1%
・サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) 27.6%
●認知症の程度Ⅲ以上の入居者が0%の割合
・介護付き有料老人ホーム 7.3%
・住宅型有料老人ホーム 10.7%
・サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設) 21.1%
・サービス付き高齢者向け住宅(特定施設) 7.9%
意外にも、施設による介護サービスの提供がない住宅型有料老人ホームでの「40%以上の割合」が一番多くなっています。また、ある程度重度の認知症を持つ高齢者が暮らし続けることができるサ高住(非特定施設)もあるので、認知症の受け入れ条件や認知症が原因での退去条件を確認しておくとよいでしょう。
「認知症高齢者の日常生活自立度」について少し説明をしておきます。認知症の症状によって、もっとも軽いⅠからもっとも重いMまでが判断基準として決められています。
もっとも軽いⅠは、若干の認知症症状はあるもののほぼ自立して生活できる状態で、もっとも重いMは、自傷や他害、興奮状態になったり、いわゆる問題行動といわれる症状が継続するなど、専門医療が必要な状態です。
上記でのⅢは、意思疎通が困難なことがあったり、着替えや排せつ、食事、火の始末などがうまくできないといった日常生活への支障が見られる状態です。
高齢になると、いつ認知症になったとしてもおかしくありません。入居時よりも認知症の症状が重くなることもありますし、認知症を発症していなくても入居後に発症する可能性もあります。
認知症になっても暮らし続けることが可能か、また重度の認知症になったら退去する必要はあるのかなど、しっかり確認しておいたほうがよいでしょう。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設は、要介護認定を受けた高齢者のための「施設」として位置づけられていますが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、高齢者のための「住居」となります。
要介護3以上を受け入れている「施設」である特別養護老人ホームに比べると、「住宅」である有料老人ホームとサ高住の入居者には重度の要介護者の割合が少ないため、自由に動きやすい身体状態であることが多いといえます。
有料老人ホームとサ高住では、自立の状態から受け入れていることも多いため、まだ介護を必要としていない、あるいは少しの支援があれば自由に動ける高齢者もいます。
よく在宅介護の限界が要介護3と言われており、自力でできないことが増えてくる要介護度です。自分ひとりで外出をしたくてもなかなか難しく、施設スタッフや家族などの付き添いが必要になることが多くなります。
しかし、有料老人ホームでもサービス付き高齢者向け住宅であっても、比較的外出や外泊はしやすく自由度は高いといえます。要介護度が高くても、付き添いがあれば同じように外出や外泊はできます。
ただし、特に外泊の場合は届け出が必要だったり、入居者の状態が安定していないときには許可が出ない可能性もあります。
有料老人ホームでもサービス付き高齢者住宅でも1日の流れはある程度決まっています。3食の食事やおやつの提供があることがほとんどで、食事の時間はだいたい決まっていますし、体操やレクリエーション、入浴などの時間もおおむね決まっていることが多くなっています。
外出の場合には事前に申請することで、食事をキャンセルできることがほとんどです。キャンセルの条件やその際の費用については施設ごとに異なりますので、事前に確認しておく必要があります。
また、有料老人ホームもサービス付き高齢者向け住宅も完全個室であるため、プライベートは確保されていますし、施設によっては夫婦で入居することも可能です。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に限りませんが、施設にはさまざまな費用がかかります。
主には、入居時にかかる入居一時金などの初期費用や、管理費、食費といった施設で暮らすための月額費用が必要です。その他にかかる費用としては、月額費用外で発生したサービス費、雑費、医療費などが考えられます。
まずは、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅でかかる費用のめやすを見てみましょう。
●介護付き有料老人ホーム(85歳・要介護3で入居の場合)
●住宅型有料老人ホーム(85歳・要介護3で入居の場合)
●サービス付き高齢者向け住宅(特定施設)
●サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)
*全国有料老人ホーム協会 2014年報告書より(有料老人ホームは全額前払い方式、併用方式、月払い方式の平均値)
サービス付き高齢者向け住宅の「基本サービス費」は介護保険サービス以外の料金となるので、介護が必要な場合はプラスで介護費用がかかります。
また、有料老人ホームの「家賃相当額」は、入居一時金が全額前払いの場合は発生しない項目です。
入居一時金にはさまざまな支払い方法があり、支払わなければならない家賃を全額前払いしたら月々の家賃を支払う必要はなく、前払いをしなければ月々の家賃を支払い、半分だけ前払いしたら残りの半分を月々の家賃として支払うといったようになります。
(例 入居一時金と月額家賃の支払い割合)
全額前払い方式 入居一時金100% + 月額家賃0%
併用方式 入居一時金50% + 月額家賃50%
月払い方式 入居一時金0% + 月額家賃100%
有料老人ホームに入居する際には、多くの場合で入居一時金が必要です。入居一時金の金額は施設ごとにまちまちで、0円から1億円をこえる高級有料老人ホームまであります。予算にあわせて選ぶとよいでしょう。
入居一時金0円の場合は、初期費用をおさえることができますが、そのぶん月々にかかる費用が高くなります。同じ施設でも、入居一時金0円から数百万円までいくつかの選択肢があるなど、選べることも多くなっています。
入居期間が長くなると、入居一時金0円のほうがトータルの支払額が高くなることもあるので、注意しましょう。
一方、サービス付き高齢者向け住宅では基本的に入居一時金はありませんが、敷金などの費用がかかります。考え方としては通常のアパートやマンションを借りるときと同じで、家賃の数カ月分です。
何カ月分なのかはサ高住によって違い、例えば家賃が10万円で1カ月分であれば敷金10万円、5カ月なら敷金50万円となるため、大きな差が出ます。初期費用にかけられる金額に限りがあるようなら、事前にしっかり確認をしておくことも必要です。
月額費用にはどんな差が出るのでしょうか。
月額費用の内訳で考えられる主な項目は、家賃、管理費、水道光熱費、食費、介護費用などです。
有料老人ホームの場合、入居一時金がかかるかどうかでもその内訳が変わってきます。
入居一時金には将来に渡った家賃が含まれているため、全額を前払いした場合には月々家賃を支払う必要はありません。つまり、入居一時金が0円であれば、月々家賃が発生します。また、入居一時金の金額が低い場合には、足りない分の家賃が月々発生するようなケースもあります。
サービス付き高齢者向け住宅には入居一時金がかからないことが多いので、月々の家賃が必要です。有料老人ホームとサ高住の月額費用で大きく差が出やすい項目のひとつです。
管理費、食費、水道光熱費に関しては、有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅に大きな差は見られません。
管理費は共用設備の点検や修理、消耗品の交換などのために必要となり、水道光熱費も管理費に含まれる場合があります。食費も施設種類による差は特になく、施設によるこだわりの違いで費用に差が出ることが多いといえます。
その他にかかるサービス費やレクリエーション・イベント費用、日用品の購入、医療費などに関しても、それほど違いはありません。
家賃以外で費用の差が出るのが介護費用です。
介護付き有料老人ホームでは施設による介護サービスの提供がある一方、住宅型有料老人ホームや多くのサービス付き高齢者向け住宅では介護サービスがついていないためです。
介護付き有料老人ホームや特定施設のサービス付き高齢者向け住宅は、要介護度によって1日当たりの介護サービス費が決まっており、その額を施設に支払うことになります。
住宅型有料老人ホームや通常のサービス付き高齢者向け住宅の場合は、施設による介護サービスがありません。そのため、必要なサービスだけ外部にお願いすることになるのですが、定額料金ではないので利用したぶんだけの介護費用がかかります。
一般的に、要介護度が重くなると必要な介護サービスの量も多くなるため、介護にかかる費用も高くなります。そうすると、介護サービスが含まれている介護付き有料老人ホームよりもトータルの月額費用が高くなってしまうこともあるので、注意が必要です。
●介護サービス費の月額費用めやす(介護付き有料老人ホーム、特定施設のサービス付き高齢者向け住宅)
要支援1 5,460円
要支援2 9,330円
要介護1 16,140円
要介護2 18,120円
要介護3 20,220円
要介護4 22,140円
要介護5 24,210円
*上記は1単位10円で計算、1割負担の場合
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、どの施設であってもメリット、デメリットがあります。
住宅型有料老人ホームと通常のサービス付き高齢者向け住宅では、施設による介護サービスの提供がないので、要介護度が重くなったら外部の介護サービス事業所からサービスを受けることが必要です。要介護度が重くなるほど介護費用がかさむ可能性があります。
ただし、自立できているうちは費用をおさえて比較的自由な暮らしができ、常に見守ってもらうこともできるので、もしものときは安心です。
介護付き有料老人ホームと特定施設のサービス付き高齢者向け住宅の場合は、施設による介護サービスがあるので安心なぶん、費用は高めになる傾向です。
初期費用で見ると、多くの有料老人ホームではそれなりの入居一時金がかかり、サービス付き高齢者向け住宅は数十万の敷金ですませることができます。
また、契約内容に大きな違いがあり、有料老人ホームは入居一時金がかかる代わりに終身にわたって住むための権利を得ることができ、サービス付き高齢者向け住宅は賃貸契約で入居できるため、気軽な住み替えが可能です。
現在の心身の状態、また将来の可能性も含めて、希望に近い有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を探してみてください。