サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の問題点とは?入居前にチェックしたいポイント

記事公開日 2023/02/01

記事公開日 2023/02/01

サ高住の問題点

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は高齢者が住みやすい住宅ですが、問題点がないわけではありません。
「囲い込み」の問題や、要介護者・認知症の方の割合など、入居前に知っておきたい内容や、失敗の少ないサ高住の選び方を解説します。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?

サ高住とは、高齢者向けのサポートが付いた住宅です。住宅内はバリアフリーの設備が整い、どの住宅でも安否確認と生活相談のサービスを受けることができます。

サ高住は、主に自立に近い方を入居対象とした「一般型」と、介護サービスの提供がある「介護型」の2種類に分けられます。
しかし、サ高住のうち「介護型」はおよそ8%しかありません(2020年時点)。多くのサ高住は「一般型」になるため、介護が必要な場合は有料老人ホーム等への入居も併せて検討しておくとよいでしょう。

サ高住について、詳しくはこちらをご覧ください。

サ高住の問題点とは

サ高住の問題点とは

サ高住は高齢者が安心して暮らせる住宅ですが、問題点もあります。入居を決める前にはデメリットを理解しておくことも大切でしょう。
サ高住の主な問題点は下記の6つです。

・実際は認知症や要介護の高い入居者が多い
・一部で不当な「囲い込み」が発生している
・一般的な賃貸よりも費用が高い
・共同設備の利用が制限される
・食事が口に合わないことがある
・要介護度や認知症の進行により退去が必要になる

ここでは、サ高住の問題点について詳しく解説します。サ高住への入居を検討している方は事前に確認してみてくださいね。

実際は認知症や要介護度の高い入居者が多い

サ高住は本来、自立に近い人の入居を想定した住宅です。しかし、実際には認知症や要介護度の高い方の入居も少なくありません。

株式会社野村総合研究所の報告書によると、2018年時点で要介護1・2が42.3%、要介護3以上が30.9%となっており、要介護の認定を受けている入居者は73.2%でした。
認定なしと要支援1・2は合わせて22.3%という結果です。

年齢層も高く、84歳以上が49.2%、75~83歳が30.7%で、平均年齢は84.3歳となっています。

認知症の症状がない人・不明の人は合わせて45.2%。入居者の半分以上に認知症の症状が出ているのが現状です。

認知症ケアや要介護度が高い入居者に対するサービスが整っていないサ高住も多く、日々の生活に不安が残ってしまう可能性があります。
認知症の方とそうでない方が同じ屋根の下で生活を送るため、さまざまなトラブルが発生することも考えられるでしょう。

一部で不当な「囲い込み」が発生している

多くのサ高住は入居者に寄り添った運営をしていますが、利益を重視するサ高住が一部存在するのも事実です。

一般型のサ高住で介護サービスを受けるには、外部の事業者と別途契約が必要です。
契約する事業者は入居者が自由に選べるはずですが、併設されたデイサービスなどの利用を強要したり、望まない介護サービスを受けさせたりする「囲い込み」が一部で発生しています。

安い家賃で入居者を集め、介護サービスを過剰に提供して儲けているサ高住の事案などが報道されたこともありました。

ケアマネジメントの公平中立性を確保するため、2018年の介護報酬改定では下記の内容が明示されています。

利用者の意思に基づいた契約であることを確保するため(一部省略)、複数の事業所の紹介を求めることが可能であることや、当該事業所をケアプランに位置付けた理由を求めることが可能であることを説明することを義務づけ、これらに違反した場合は報酬を減額 (一部省略)する。

その後もケアプランの検証や厚労省による指導があるなど、不当な囲い込みをなくす動きが継続されています。

一般的な賃貸よりも費用が高い

サ高住は、一般的な賃貸物件より費用が高いといえます。しかしこれは高齢者に向けた設備や生活相談などのサービスが整っているためです。

費用の高さはデメリットですが、サ高住はバリアフリー化や安否確認も義務付けられているため、高齢者が安心して暮らせる点はメリットでしょう。

サ高住の費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

共同設備の利用が制限される

サ高住は自由な生活を送りやすい住宅ですが、キッチンや浴室などといった共同設備を自由に使用できない可能性があります。

入浴時間が決められていて好きなタイミングでお風呂に入れない、共同のキッチンに他の入居者がいて思うように使えない、といったケースもあるでしょう。
サ高住ではある程度のルールに従い、他の入居者と譲り合って生活する必要もあります。

食事が口に合わないことがある

多くのサ高住では食事を提供していますが、食事の好みは人それぞれです。そのため、口に合わないこともあるかもしれません。

食事の内容はサ高住ごとに異なります。専属のシェフが毎食手作りするなど食事にこだわりを持つ住宅がある一方で、人件費や材料費などのコストを削減するためにレトルトの食事を提供するような住宅もあります。
電子レンジや湯煎で温めただけの食事は、人によっては苦手なこともあるでしょう。

要介護度や認知症の進行により退去が必要になる

要介護度や認知症の進行具合によっては、退去が必要になることもあります。
一般型のサ高住は、主に自立に近い高齢者が入居対象です。そのため、要介護度が上がって常に介護が必要な状態になったり、認知症が進行して集団生活が難しくなったりすると、通常のサービスでは満足なケアが受けられないこともあるでしょう。
住宅側が入居の継続を困難と判断した場合は、退去を求められることもあります。

失敗しないサ高住を選ぶためのチェックポイント

失敗しないサ高住を選ぶためのチェックポイント

入居後に「失敗した」と思っても、退去するには時間もお金もかかります。
失敗しないサ高住を選ぶために、下記のポイントを確認しておきましょう。

・経営年数・入居率
・人員配置
・緊急時の対応
・サ高住ごとのルール
・設備
・食事
・介護サービス

経営年数・入居率

経営年数が長く入居率も高いサ高住は、経営が安定しているといえます。突然倒産する可能性が低いため、比較的安心して入居できます。

開設から2年以上経過したサ高住の入居率は平均で92%。平均と比べてあまりにも入居率が低いサ高住は、何か問題がある可能性があります。
気になるサ高住を見つけた際には、経営年数と入居率を質問してみましょう。

人員配置

スタッフの数が少ないと満足なサービスを受けられないかもしれません。
一般型のサ高住では、下記のいずれかのスタッフが日中常駐していることが義務付けられています。

・社会福祉法人、医療法人、指定居宅サービス事業等の職員
・医師、看護師、介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、ヘルパー2級以上のいずれかの資格を有するもの

出典:厚生労働省「特定施設入居者生活介護

夜間の常駐は義務付けられておらず、緊急通報システムの設置などで対応しています。「夜も誰かいないと心配」という方は、夜間にスタッフが常駐しているかを事前に確認しておきましょう。

緊急時の対応

入居中には、突然体調を崩したり転倒して骨折したりする心配もあります。サ高住を選ぶ際には、下記の緊急時の対応も確認しておきましょう。

・緊急通報装置はどこにあるか
・ハンズフリーで緊急通報できるか
・緊急通報後、スタッフはどのくらいで到着するか
・医療機関へ搬送するまでのマニュアルは共有されているか
・緊急対応時のための研修はされているか

緊急時に迅速に対応してもらえるか、詳細まで確認しておくと安心です。

サ高住ごとのルール

浴室やキッチンなどの共有設備には、サ高住ごとに独自のルールがあります。使用方法や利用できる時間帯などのルールが日々の生活を送るうえでストレスにならないかを確認しておくと安心です。
また、外出や外泊をするための届け出に細かなルールがあるようなサ高住だと、自由が制限されてしまう可能性もあるでしょう。

入居する方の希望と相違がないか、各種ルールを理解したうえで入居を決めましょう。

設備

サ高住には、トイレや浴室のほか、キッチンの設置も義務付けられています。共用の設備としている住宅もありますが、居室内にキッチンや浴室がついていることも。

国土交通省の資料によると、居室にキッチンが設置されているのは36.1%、浴室は20.7%となっています。
「自分の部屋で料理したい」「人目を気にせず一人でお風呂に入りたい」などの希望があれば、居室内に設備が整っているサ高住を探してみるとよいでしょう。

また、フィットネスジムやカラオケルームなどが備わっているサ高住もあり、そのような住宅であれば充実した毎日を送れそうです。

食事

食事の好みは人それぞれ異なるため、入居する本人の好みに合うかが重要になります。
サ高住を見学する際には、できれば食事のタイミングに合わせるのがおすすめです。盛り付けやメニューを確認し、可能であれば試食もしてみてください。

毎日の食事を楽しみにする高齢者は少なくありません。作り手や食事のこだわりは確認しておきましょう。

介護サービス

一般型のサ高住は、外部の介護事業者と契約して介護サービスを利用します。利用する事業者は自由に選べるはずですが、併設の介護サービス事業所との契約を求められるなどの囲い込みが問題視されている現状があります。

サ高住を選ぶ際には、入居者が自由に介護事業者を選べる環境なのか、住宅側の説明に曖昧さはないかを確認しておきましょう。

一方、介護型であればサ高住による介護サービスを受けられます。介護サービスが必要であれば、はじめから介護型のサ高住を検討してもよいでしょう。

老人ホーム相談室LP

サ高住への入居後に問題点を解決する方法

サ高住への入居後に問題点を解決する方法

ご紹介したポイントを確認してサ高住を選んでも、入居後に「想定より費用が高い」「認知症の症状が進行した」などの問題が発生することもあるかもしれません。
これらの問題点を解決するには下記の方法があります。

・家族のサポートによって費用を抑える
・要介護度や認知症が進行したら転居も検討する

家族のサポートによって費用を抑える

サ高住では病院への付き添いや部屋の掃除などを有料でサポートしてもらえますが、利用頻度が高くなると費用がかさんでしまいます。便利なあまり使いすぎてしまうと、想像以上の出費になる可能性もあるでしょう。

掃除や洗濯、外出などを本人が一人でできない場合には、家族がサポートすることによって費用を抑えられます。また、頻繁に家族が面会すれば入居者も安心できるでしょう。
ただし「自分がやらなければ」と使命感を持ちすぎることは禁物です。ご家族に無理のない範囲でのサポートをおすすめします。

要介護度や認知症が進行したら転居も検討する

要介護度や認知症が進行して自立した生活が難しくなると、状態によっては常に介護が必要になります。そうなると外部の介護サービスだけでは不十分になる可能性もあるでしょう。

十分なケアを受けられないと感じるようならば、他の施設への転居を検討したほうがよいかもしれません。
具体的には、要介護度の高い高齢者が入居する特別養護老人ホームや、認知症の診断を受けた高齢者が入居できるグループホームなどといった選択肢があります。
また、有料老人ホームであれば、さまざまな条件から希望に合った施設を探すこともできるでしょう。

問題点を把握したうえで、希望に近いサ高住を

サ高住は高齢者が自由に暮らしやすい住宅です。住宅内はバリアフリーで一定のサポートもあるため、安心して生活を送れます。
しかしサ高住に問題点がゼロかというと、そうではありません。一部では不当な囲い込みが発生していたり、要介護度や認知症が進行すると住み続けることが困難になったりする可能性もあります。

理想的なサ高住を見つけるためには、サ高住ならではの特徴を把握しておく必要があるでしょう。また、経営年数や入居率、住居独自のルールを予め確認しておくと安心です。

費用やサービス内容、スタッフの人員配置などを住宅ごとに比較しながら探すと、希望のサ高住が見つかりやすくなります。
オアシス介護ではエリアや費用、施設種類を絞って検索できます。ぜひオアシス介護で希望に近いサ高住を探してみてください。

老人ホーム相談室LP

著者:オアシス介護

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