介護付き有料老人ホームとは

 超高齢社会が加速する日本では、終の棲家として老人ホームを選択する人の割合が上昇傾向を示しています。
自分の両親や義理の親、あるいは自分自身の生活の場を施設に移すことは、いまや特別な判断ではありません。

 施設の中でも、老人ホームを探すときには目にすることが多い、「介護付き有料老人ホーム」についてみていきましょう。

介護付き有料老人ホームへの入居条件

入居できる要介護度は?

 施設によって異なりますが、介護付き有料老人ホームを利用するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
65歳以上であること、要介護1以上であることを入居の対象者と定めた施設が一般的です。

 とはいえ、要介護1~5の高齢者の生活を支える介護専用型施設がある一方、入居の段階で自立生活が可能な高齢者でも利用できる混合型の施設も多数存在しています。
ですから、個々の状況に合わせたホームを探すことができるでしょう。

認知症や持病がある場合は?

 認知症や疾病がある場合には、受け入れが可能なのかどうか心配な方も多いでしょう。
重篤なケースでは利用を制限するホームもありますが、重度認知症の方でも入居できる施設や、感染症や胃ろう・気管切開などの医療ケアを要する利用者に対して、常勤看護師がサポートする施設も多く存在します。

 一方、入居するまでに数年かかることもある特別養護老人ホーム(特養)には、要介護3以上という入居条件があり、要介護度が高い方の受け入れが可能です。しかし、この条件を満たす場合でも、医療への依存度が高い方は特養入居への審査を通らないケースがあります。
介護付き有料老人ホームは、そのときの重要な受け皿ともなっているのです。

 また、身元引受人の有無をどのように裁量するかも施設次第。
施設によって方針などがさまざまに異なる介護付き有料老人ホームですが、どの施設でも、共同生活になじもうとする姿勢は必要といえそうです。

介護付き有料老人ホームの特徴

 近年、介護の現場では利用者一人ひとりの趣味嗜好を反映した介護計画を練り、「個の尊重」を重んじたサービスを提供する施設が増えてきました。
有料老人ホームに関していえば、管理に近い画一的な介護を行う施設は減少へと向かっています。

 毎日の食事は季節感を大切にし、味付け・盛り付け両面で利用者を満足させるべく工夫が凝らされます。
職員が考案したゲームや地域との交流会、習い事教室や屋外行事など、暮らしに刺激とハリを与えるレクリエーションも盛んに実施され、入居者が孤独に陥らない配慮がなされています。

 身辺介助の範囲は柔軟に捉えられ、居住スペースの掃除や洗濯・管理などの家事サービス、行政手続きの代行、買い物代行などの生活支援も提供されます。
入院した際には洗濯物の引き上げや物品の購入を請け負うことも多く、家族の手を借りられないケースにも安心です。

 介護付き有料老人ホームの最大の特徴は、その名の通り介護に関して手厚い配慮がなされていることです。
要介護度が進んでからも施設での生活に支障がでる恐れが少ないこと、医療施設との連携で病気への対応もスムーズな点にあります。

このように、介護や医療ケアが必要である、または将来的に必要となることを見越した場合に、介護付き有料老人ホームのメリットが際立ってくるのです。

他の有料老人ホームとの違い

 同じ有料老人ホームでも「住宅型有料老人ホーム」では、介護が必要となったときに、訪問介護などの外部サービスを選択する必要があります。

 さらに自立を前提とした「健康型有料老人ホーム」に至っては、要介護度が上がると退去を余儀なくされます。
こちらは介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームと比べて極端に数も少なく、まだ新しい共同生活の試みという色合いが強いかもしれません。

受けられる介護・医療サービス

 介護付き有料老人ホームでは、常駐スタッフによって食事や入浴、排泄などの介護サービス全般を受けることができます。
介護スタッフは介護計画に基づいて配置され、身辺介護は24時間体制です。

 日中は看護師あるいは准看護師が常勤し、検温、血圧測定、投薬管理、褥瘡(じょくそう・床ずれ)を含む皮膚疾患のケアや軽い外傷の処置など、日常的な体調管理に留意します。 夜間には看護師の配置は義務付けられていないものの、外部の医療機関と提携しているので、その点も心強いですね。

 施設によっては看護師・医師も24時間体制を実施しているところもあります。

スタッフの人員基準

 スタッフの最少人数は介護保険法によって定められており、直接介護にあたるスタッフは利用者3人につき1人以上が最低ラインとなります。

 例えば、高齢者90人が入居する施設なら最低でも30人のスタッフがケアにあたる計算となりますが、常時30人が出勤しているわけではなく、早番・日勤・公休などのシフト分けによって各時間帯に配置されています。

 施設の説明資料では、よく3:1、2:1(利用者数:スタッフ数)などで示されています。
職員比率が高ければ高いほど、つまり左の数字が小さければ小さいほど、手厚いサービスが受けられるという判断基準になります。
ですがスタッフの人数が多ければ、そのまま利用料に跳ね返ってくる面もありますから、慎重に検討しなければなりません。

 また、機能訓練指導員の配置も運営条件のひとつです。作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師などリハビリテーションの知識を持った職員が、利用者の身体機能維持にあたります。 個別にメニューが組まれ、器具を用いた筋力の強化から寝たきり状態の方に施すマッサージまで、各人の健康に必要なプログラムが行われます。

介護付き有料老人ホームの設備

 設備に関しても基準があり、個室または4人部屋までの居室と、食堂、浴室、トイレ、機能訓練室、一時介護室などを備えたバリアフリー構造であることは必須です。

 立地条件も含めて、高齢者が安全・安心に生活を送れるよう、さまざまな配慮が義務付けられています。
スプリンクラーを全室に設置し、不燃性の建材を用いるなど、過去の痛ましい事例を教訓に安全対策を敷く施設も増えています。

特定施設とは

 老人ホームを探すとき、しばしば目にするのが「特定施設」という文言。
「特定施設入居者生活介護」の指定、及び指定を受けている施設を指す言葉で、介護保険法第7条第16項を根拠に、厚生労働省によって定められています。

 さきほど紹介したスタッフの人員基準や運営計画、設備に関する基準はこの「特定施設入居者生活介護」に沿ったものです。
かいつまんで言えば、要介護度の高い利用者に充分対応できる施設であること、それが「特定施設」であるという意味となります。

 「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていないと「介護付き」と名乗ることはできません。
つまり、介護付き有料老人ホームは「特定施設」ですが、住宅型有料老人ホームや健康型有料老人ホームは「特定施設」ではないのです。

施設選びで役立つ「重要事項説明書」

 希望に合う施設を探すには、HPやパンフレットを確認する、実際に見学をするなども重要ですが、重要事項説明書を確認することもひとつの判断基準になります。

 重要事項説明書とは、施設側が入居予定者に対して契約内容をわかりやすく示すための文書です。
介護施設運営者には、入居者や家族との契約時にこの書類に基づいて説明することが義務付けられていますが、多くの場合ではこの内容を事前に確認することができます。

 書式や名称に定めはなく、施設や地域によって異なりますが、一般的な記載事項例を紹介しましょう。

 施設概要、事業目的、運営方針、従業員数や責任者などに関する職員体制、提供するサービス内容の一覧、利用料金の一覧、個人情報使用同意書など機密保持に関する規約。
これらのものが重要事項説明書に記載されています。

 上記のような内容がわかれば、判断の目安になるでしょう。
曖昧なまま契約を結ぶことはトラブルにつながります。不明な点は、施設側に必ず質問することが大切です。
介護付き有料老人ホームの利用は基本的に終身制ですから、しっかりと疑問を解消し、信頼関係を結べる相手かどうか見定めたうえで最終判断をしましょう。

介護付き有料老人ホームの費用

 高齢者施設の利用を検討するとき、最もネックとなるのは費用負担です。
介護付き有料老人ホームの場合、特に注意すべき点はどのようなことでしょうか。

介護付き有料老人ホームの費用の特徴

 特別養護老人ホームや介護老人保健施設などが地方公共団体や社会福祉法人によって運営されるのに対し、介護付き有料老人ホームは主に民間企業の経営となります。
福祉を担う一方で、ビジネスとして成り立たなくてはいけません。

 それに加え、ここまでで説明した通り入居条件や提供されるサービス、医療の範囲は施設ごとにまちまち。そのため費用はまさにピンキリです。

 同じ有料老人ホームの中でも、住宅型や健康型と比べて高額になりがちな介護付き有料老人ホームですが、長い目で見ると費用が抑えられる場合も。
詳しくは以下で説明していきます。

入居一時金とは?

 まず、入居に際して必要となる入居一時金。
0円から数千万円まで、立地や設備の内容、介護・医療の質に応じて多種多様です。

 入居一時金を支払うことで、本人が永続的にホームに居住する権利を買い取るという意味合いがあるため、利用料と別に初期費用として一定の金額を支払うわけです。 これは「終身利用権方式」と呼ばれ、有料老人ホームの多くがこの形式をとっています。

 そうなると気になるのは一時金0円の施設。
この場合、代わりに月払いの家賃というかたちで利用権の料金が引き出され、月々の利用料が高額になりがちです。当然、入居が長くなるほどトータルの出費はかさみ、一概にお得とはいいきれません。

 それをふまえて仮に、入居一時金を500万円と想定します。
70歳で入居し、85歳までの15年間をホームで過ごした場合、1カ月あたりの家賃はなんと28,000円弱。一時金1,000万円であっても倍の55,000円程度に収まる計算です。

 まとまった金額を工面するハードルの高さにばかり目がいきがちですが、入居一時金は長いスパンで見ると利用者の側に立った制度であることがわかりますね。
初期費用を少しでもおさえるか、まとまった一時金を用意して入居を迎えるか、どちらもメリット・デメリットをふまえて選択しましょう。

 また、有料老人ホームはほとんどが利用権方式に基づく契約ですから、本人が死亡したときには権利が消失し、家族や親族への譲渡も不可とされています。
そして入居一時金の返還金制度に基づき、死亡時や退去時に一時金の償却が設定されていますから、施設の償却率は事前に充分確認しましょう。

月額利用料とは?

 入居一時金を支払って入居したあとも、月額利用料がかかります。 こちらは管理費、食費、水道光熱費、利用状況に応じて医療費やおむつ代などの雑費を含み、おおよそ12万円~40万円ほど。 1割(所得によっては2割、2018年8月以降は3割のケースもある)が利用者負担となる介護保険料もここに計上されてきます。

 施設のグレード、提供されるサービスの内容が反映されますから、やはり金額に幅がありますね。

 参考までに、退職後の夫婦2人の生活費概算をすると、ひと月あたり25万円前後、単純計算で1人あたま12万円強です。
介護が必要な方なら、上記以上の金銭面の負担、さらには家族の心理的、時間的な負担が増えますから、高額に感じる利用料にも妥当性がうかがえます。

介護保険の自己負担額は?

 この流れで、月額利用料に類する介護保険の自己負担分についてもみていきましょう。
介護付き有料老人ホームの場合、すでに説明した「特定施設入居者生活介護」の適用となりますから、要介護度が上がっても外部の訪問介護サービスなどを発注する手間はかからず、毎月定められた費用を納めることになります。

 最も軽い要支援1でおよそ55,000円、最重度の要介護5で約240,000円を1ヶ月の限度額として、介護保険の自己負担分である1割ないし2割の金額を支払います。
つまり1割負担の場合の実費は、ほぼ自立している要支援1で月5,500円、全面的に介護を必要とする要介護5で月24,000円がかかる計算です。

 入居したときには自立に近くても、時間の経過と共に要介護度が高くなる可能性もあり、そうすると必然的に介護にかかる費用も上がります。 毎月発生するこれらの介護費用は、将来の可能性も含めてきちんと見積もりに組み込んで予算計画を立てましょう。

 ちなみに、介護報酬そのものは厚生労働省によって単位が定められていますが、実際の算出にあたって1単位何円で計算するかは、わずかながら地域差があります。

介護付き有料老人ホーム 月額費用の目安
介護保険サービス外の費用は?

 そのほかに計上される出費として、施設によっては「上乗せサービス」「横出しサービス」と称される費用があります。

 まず、「上乗せサービス」とは、国の定めた規定以上に手厚いサービスを提供するためにかかったコストを入居者に請求するというもの。

 たとえば、先ほどスタッフの人員基準について触れた通り、介護スタッフの人数を最低ラインの3:1(利用者数:スタッフ数)より多く確保した施設ならば、きめこまやかなケアが受けられる一方で、ふくらんだ人件費をサービス料として支払う必要が生じるのです。

 続いて、「横出しサービス」、または追加サービス料として請求される料金。
利用者が受けた介護サービスのうち、国の定める介護保険の適用にそもそもならない行為への対価を指します。

 施設利用者に人気の高い理美容サービスや便利な買い物代行などもこれにあたり、規定回数以上の通院付き添いなども該当します。

 これらはいわばオプション料金であり、重要事項説明書などで事前に開示されていることがほとんどです。ある程度は必要経費と割り切り、利用を見越したうえで月額料金を見積もりましょう。

介護付き有料老人ホームでの税金控除

 入居に向けた費用対策として、貯蓄と同じくらい大切なのが各種控除に関する知識です。

 まずは、医療費控除について。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設(療養病床)の3つの高齢者施設では、施設サービスの対価として支払った介護費・食費・居住費、またはその1/2に相当する金額が医療費控除の対象となります。

 ところが、有料老人ホームにおいては医療費控除を受けることは残念ながらできません。
しかし、老人ホーム内で発生した治療費や、日常的に使用しているおむつ代などは控除の対象となる場合がありますから、領収証を保管しておきましょう。

 一方、有料老人ホーム入居者でも扶養控除は適用されます。
一般に、子や弟妹など配偶者以外の親族であり、世帯主と生計を同じくし、被扶養者(この場合は入居者)の所得額の合計が38万円以下であるとき、70歳以下なら38万円、70歳以上であれば48万円が控除額として還付されます。

 年末調整や確定申告で忘れずに手続きを済ませるだけで、年間48万円が戻されるシステムはぜひ活用しましょう。
また、世帯をまとめることで医療費控除もひとまとめになりますから、入居者単体では規定額に達することが難しい場合も、家族全員の医療費と合算して対象とされるケースも考えられます。

介護付き有料老人ホームは、将来も考えて探す

 介護付き有料老人ホームのメリットは、入居条件が幅広く比較的「待ち」が少ないこと、介護・医療の両面に対するケアが手厚く、施設内での生活が安定していることが挙げられます。
一方でデメリットとして、他の施設に比べると全般的にコストがかさむことは否めません。

 日本人の平均寿命は延び続け、90歳以上、100歳以上の高齢者も珍しくありません。
70歳で施設に入居したとして、20年を優に超える歳月を過ごす場所を選ぶにあたり、初期費用、ランニングコスト、安心と安全のうち何を重視するか、もう一度考えを整理し、大切な人と話し合う必要があるでしょう。

 また、平均寿命と健康寿命、すなわち自立した生活を送れる年齢との間には、10年ほどの開きがあるというデータも念頭に置いておきましょう。

 今は健康でも、最後の10年は人の助けを借りる生活が待っているかもしれません。長い目で見てベストな選択を導き出したいですね。

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