ユニット型特養は従来型と何が違う?メリット・デメリットやおすすめの人を解説

記事公開日 2023/04/24

記事公開日 2023/04/24

ユニット型特養

特養には「ユニット型」や「従来型」があることをご存じでしょうか?
この記事では、ユニット型特養の特徴だけでなく、費用や間取り、人員配置の従来型との違い、メリット・デメリットなどを解説します。

ユニット型特養とは

ユニット型特養とは

ユニット型特養とは、高齢者がその人らしい尊厳を持った生活を送れるよう、プライバシーの確保や個別でのケアを重視した特養です。

具体的には、10人以下のグループをひとつの単位(ユニット)として、一人ひとりの個室とユニットごとに専任の職員が配置されます。
ユニット型特養で行われるケアはユニットケアと呼ばれており、福祉国家として有名なスウェーデン方式に由来するといわれる手法です。

ユニット型特養では入居者のプライバシーが尊重され、プライベート空間である個室には家族との思い出の品やお気に入りの物を置いて自分好みの部屋を作れます。
入居者同士や職員との距離が近くなるよう、各居室の中央付近に共有のリビングスペースなどが配置されているのも特徴のひとつです。

従来型特養では4人以下が相部屋で生活する多床室が多く、プライバシーの確保が難しい環境でした。また、職員は大勢の入居者を受け持つため丁寧なケアを提供しにくいといった問題もありました。

これらの不満を解消するため、厚生労働省は特養の定員のうち7割がユニット型になるように目指し、これを2025年度までの目標としています。

入居条件

特養の入居条件はユニット型も従来型も変わらず、原則として要介護3以上の方が対象です。65歳以上の方のほか、特定疾病により要介護認定を受けた40~64歳の方も対象となります。

ただし要介護1・2であっても、下記条件のように在宅での日常生活が困難な場合は、特例的に入居を認められるケースもあります。

・認知症や知的障害・精神障害等により行動や意思疎通が困難になり、日常生活に支障をきたしている
・家族等による深刻な虐待により、心身の安全や安心の確保が難しい
・家族の支援が期待できず、また地域での介護サービスや生活支援が不十分である

特養は入居希望者が多いため、申し込みをしてもすぐには入れない可能性があります。入居を希望する方は早めの申し込みをおすすめします。

提供されるサービス

ユニット型特養で提供される主なサービスは下記の通りです。

・食事の提供
・入浴・排泄などの介助
・レクリエーション
・リハビリテーションの実施
・看護師による健康管理

入浴・排泄介助などの介護サービスや日常生活のサポート、3食の食事提供はもちろん、看護師による健康管理、リハビリテーションもあります。また、日々の生活にメリハリをつけるレクリエーションや季節のイベントも開催されます。

従来型特養でも提供されるサービスは同じですが、ユニット型特養では専任のスタッフが個別にケアを行うため、より丁寧なケアを期待できます。

ユニット型特養と従来型特養との違い

ユニット型特養と従来型特養との違い

ユニット型特養と従来型特養にはどのような違いがあるのか、下記の項目ごとに解説します。

・間取り
・人員配置
・料金

間取り

ユニット型特養では、1ユニットにつき入居者10人程度で生活を送ります。一人ひとりに個室があり、プライバシーが尊重されています。

居室に囲まれるようにリビングなどの共有スペースが中央に配置され、プライバシーが確保されながら他の入居者ともコミュニケーションをとりやすい間取りです。

従来型特養では多床室が多く、1部屋を2人から4人で利用します。カーテンなどの仕切りはありますが、人の気配を感じやすくプライバシーの確保は難しいでしょう。音や気配に敏感な方はストレスに感じるかもしれません。
ただし、従来型でも個室や半個室のような部屋タイプもあります。

人員配置

ユニット型特養・従来型特養ともに下記の職員の配置が義務付けられています。

施設長    :1人
医師     :必要数
看護職員または介護職員:入居者3人に対し1人以上
生活相談員  :入居者100人に対して1人以上
栄養士    :1人以上
機能訓練指導員:1人以上
介護支援専門員:1人以上

ユニット型特養は上記に加え、下記が必要となります。

・ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置
・昼間:1ユニットごとに看護職員または介護職員が常時1人以上
・夜間:2ユニットごとに看護職員または介護職員が1人以上

従来型特養の看護・介護職員はフロアすべての入居者を担当するなど、多くの入居者をケアします。
そのため、ケアが流れ作業的になってしまったり、担当する職員が毎回違うことで入居者にストレスを与えてしまう、職員とのコミュニケーションがとりにくいといったデメリットがあります。

一方ユニット型特養では、看護・介護職員はユニットごとの専任です。
毎回同じ職員から介護サービスを受けられるため、入居者と職員の信頼関係を築きやすく安心感につながります。個々の要望に沿った対応もしてもらいやすい環境です。

料金

ユニット型特養・従来型特養どちらも入居一時金などの初期費用は不要です。
月額費用の目安はユニット型特養で14万円前後、従来型では10万円前後となり、内訳は下記の通りです。

■ユニット型特養の料金目安
ユニット型特養の料金目安/要介護度別
※自己負担1割、1カ月を30日、1単位10円で計算

■従来型特養(多床室)の料金目安
従来型特養(多床室)料金目安/要介護度別
※自己負担1割、1カ月を30日、1単位10円で計算

その他、施設が提供しているサービスによってはさらに費用がかかります。その逆に、所得によって居住費や食費を軽減できる制度があるため、上記の金額より安くなるケースもあります。

ユニット型特養は専任スタッフを配置しているうえ個室を提供しているため、施設介護サービス費や居住費が高い傾向です。そのため、ユニット型特養は従来型と比べて月額費用が高くなります。

ユニット型特養のメリット

ユニット型特養のメリットは下記の通りです。

・プライバシーを確保できる
・専任の職員によるケアを受けられる
・他の入居者とコミュニケーションがとりやすい

プライバシーを確保できる

従来型の多床室では1部屋を最大4人で利用するため、常に人の気配を感じる環境です。人によってはストレスを感じやすく、カーテンなどの簡易的な仕切りではプライバシーの確保が難しいでしょう。

ユニット型特養は入居者一人ひとりが個室で生活できるため、プライバシーを守ることができます。他人と接するのが苦手な方や気疲れしがちな方でも、ストレスなく1人の時間を過ごせるでしょう。
居室には思い出の品やなじみの物を置けるので、自分好みの空間で自宅のように生活できることもメリットです。

専任の職員によるケアを受けられる

ユニット型特養では、ユニットごとに専任の職員が配置されます。
毎回決まった職員にケアしてもらえるため、一人ひとりの状態に合わせたきめ細かいケアが期待できます。職員との信頼関係も築きやすいでしょう。

他の入居者とコミュニケーションがとりやすい

ユニット型特養は、ユニットの中央に共用スペースが配置されており、他の入居者とコミュニケーションがとりやすい構造です。
従来型の多床室と比べると、ベッドの上で過ごす時間や日中の睡眠時間が減少し、共用スペースでの滞在時間が増加したという研究結果もあります。

従来型とユニット型の比較/研究結果
出典:厚生労働省「補論2 ユニットケアについて

他の入居者と関わる機会があると活動的になり、高齢者の身体機能の維持や回復にも役立ちます。

ユニット型特養のデメリット

ユニット型特養のデメリットは下記の通りです。

・従来型より費用が高い
・人間関係によっては居心地が悪い

従来型より費用が高い

月額費用の目安は、従来型(多床室)が10万円前後、ユニット型特養は14万円前後です。従来型よりも4万円ほど高いため、経済的な負担が大きいといえます。

高額になる大きな要因は居住費です。従来型特養の多床室は月額でおよそ25,650円、ユニット型特養は60,180円と、その差は34,530円にも及びます。
ユニット型特養はプライバシーが保たれる一方で費用が高くなるため、予算も考慮したうえで検討する必要があります。

人間関係によっては居心地が悪い

ユニット型特養は10人程度の少人数で生活するため、人間関係がこじれると居心地が悪くなるおそれがあります。仲の悪い人や嫌いな人がいると、他の入居者とのコミュニケーションをとる機会も減り、ストレスが溜まってしまうかもしれません。

ユニット型特養では他の入居者とコミュニケーションをとりやすいメリットがありますが、一方でささいな会話などからトラブルが発生する可能性もゼロではありません。

ユニット型特養がおすすめの人

ユニット型特養がおすすめの人

ユニット型特養がおすすめの人は下記の通りです。

・アットホームな生活環境を求める人
・プライバシーの確保をしたい人
・手厚いケアを受けたい人

アットホームな生活環境を求める人

ユニット型特養はアットホームな生活環境を求める人におすすめです。
1ユニット10人程度の少人数で、まるで家庭のような共同生活ができます。各個室の中央に配置されたリビングでは、他の入居者とのコミュニケーションを楽しめます。
職員もユニットごとの専属となるため、信頼関係を築きやすいでしょう。

プライバシーの確保をしたい人

ユニット型特養には入居者一人ひとりに個室があるため、プライバシーの確保が可能です。
他の入居者と関わる機会は欲しいけれど、1人の時間も欲しい方に適しています。

手厚いケアを受けたい人

ユニットごとに専任の介護職員が常駐しており、手厚い介護サービスが受けられます。いつも決まった職員から介護サービスを受けられるため、人見知りの方も安心です。
一人ひとりの状態に合わせたきめ細かいケアが期待できるため、要介護度の高い高齢者でも安心して入居できます。

老人ホーム相談室LP

ユニット型特養の1日の流れ

ユニット型特養の1日は施設により異なりますが、おおむね以下のような流れになります。

6:30 起床
8:00 朝食
10:00 入浴
12:00 昼食
15:00 おやつ、レクリエーション
16:00 健康診断
18:00 夕食
21:00 就寝

各ユニットにある共用スペースで3食の食事やおやつが提供され、なじみのメンバーと顔を合わせながらの食事ができます。食事中は必要に応じて専任のスタッフがサポートし、噛む力が弱い方や嚥下が苦手な方には刻み食や流動食が提供されるため安心です。

空き時間には、ユニットごとの希望を踏まえたレクリエーションが開催されます。参加は自由なため、交流が苦手な方は1人の時間を過ごしても問題ありません。

その他、餅つき大会や節分、ひな祭り、花火大会やクリスマスなどの行事を開催する施設も多く、季節の移り変わりを感じられます。イベント時には季節に合わせた行事食が提供されることも多いでしょう。

ユニット型特養は生活保護受給者でも入居可能?

ユニット型特養は生活保護受給者でも入居可能か

ユニット型特養は、生活保護受給者でも入居可能なケースがあります。
厚生労働省は2011年より、「社会福祉法人等による生計困難者に対する介護保険サービスに係る利用者負担額軽減制度事業」を実施しており、条件に当てはまるとユニット型特養の居住費が0円になります。

制度の利用には以下すべての要件を満たした生活保護受給者、もしくは生活困難者でなければなりません。

① 年間収入が単身世帯で150万円、世帯員が一人増えるごとに50万円を加算した額以下であること。
② 預貯金等の額が単身世帯で350万円、世帯員が一人増えるごとに100万円を加算した額以下であること。
③ 日常生活に供する資産以外に活用できる資産がないこと。
④ 負担能力のある親族等に扶養されていないこと。
⑤ 介護保険料を滞納していないこと。

引用:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.954

詳しくは担当のケアマネジャーや市町村の窓口などで相談してみましょう。

ユニット型特養には個人を尊重したケアと環境がある

ユニット型特養とは、入居者がその人らしい尊厳を保った生活を送れるよう、プライバシーの確保や個別でのケアを重視した施設です。
従来型特養の多床室と異なり、入居者一人ひとりに個室があるため、ストレスなく過ごせます。
また、ユニットごとに専任の介護職員が配置されるため、きめ細かいケアも期待できるでしょう。ただし、従来型特養と比べると費用が高い傾向にあります。

入居者ご本人の希望に合わせつつ、費用面に無理のない施設を選びましょう。

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著者:オアシス介護

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